barにて

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「追放……」 「それでもあなたは、私に一億を払えると言うのですか?」  目を開け、砂原はまっすぐ珠奈を見る。  珠奈は迷わずに頷いた。 「追放されてても、一度負けていても、あなたが『砂原家』で一番の力を持っていることに代わりはないので」 「他人を簡単に信じるのはどうかと思いますよ」 「言ったでしょ。私には多少だけど霊感がある。あなたは悪人じゃないはずです」 「……そうですか」 「依頼を受けてくれますか?」  砂原は沈黙の後、口を開く。 「独り身の私には、一億という大金が魅力的です」 「……じゃあ」 「お名前を伺ってませんでしたね」  珠奈は微笑む。 「熊谷珠奈です。名前で呼んでください。名字で呼ばれるの、好きじゃないんです」  砂原は、珠奈に写真を返し、口を開く。 「珠奈さん。あなたのお兄さんは、今、どこにいらっしゃいますか?」
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