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「時間は、夕立が始まり終わる十分間ほど。廃墟に転送されてもあなたには意識がありますね? 水晶玉の電源は通路を絶つスイッチなので切ってもこちらの様子は確認できるはずです。電源を切った後は廃墟から様子を見守ってください」
咲哉も頷く。
「電源を切る時は焦らずに。ボルトは常に神経を尖らせています。ここに降りてくる前に電源の操作に気づかれ廃墟に戻ってしまったら、私はボルトを追うことができずに終わりです」
「分かった」
「宜しくお願いしますね」
「ああ。頼む」
雷が鳴る。
雨が降ってきた。
外で降る弱い雨が瞬時に強い音へ変わり、面会室に響き渡る。
咲哉は夕立が来ると、目を閉じた。
そして、すぐに目を開けた。
見逃してしまうほどほんの少しだが、目が青みがかっている。
さっそくボルトの派遣した悪霊が、咲哉に乗り移ったようだ。
「まずはあなたから。さぁ、この手に触れてください」
咲哉に乗り移った悪霊は、首を捻りながらも手を伸ばす。
ガラス越しに手が合わさると、彼はふらっとして、椅子に座り、また目を閉じる。
数十秒後。
彼の目は開き、今度はほんのりと目が赤みがかった。
どうやら、目的の死神がやってきたようだ。
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