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砂原は鋭い目付きに変わる。
ボルトはそのまま、強風に押し出され、壁に叩きつけられた。
「くう……!」
割れた面会室のガラスを軽やかに越え、砂原は座り込むボルトの前に立つ。
「包囲網を張りました。水晶玉の電源も切りましたし、あなたにはもう逃げ場がありません」
「何……?」
「もう終わりですか? 随分と弱いんですね」
「何だ、この力は……」
「どうしました? 確か、あなたのほうが力がお強いんですよね?」
「そんな、そんなはずは……」
「早く、その力を見せてもらえませんか?」
砂原は冷たく笑う。
「何故だ。お前は砂原家で一番力が弱かったはずだ! なのに、何で」
「あなたは悪霊しか見えないようですね」
「何を言っている?」
「あなたに協力者がいるように、私にも協力者がいます」
「協力者?」
「私は六年前、一度きりのミスをしました。でもそれは、あなたも同じです」
「何だと……?」
「私が罪を犯したあの日から、ずっと心配して彼は私に取り憑いてるんですよ。生前からよく私になつく子なので。彼と魂が一体になった私は力も二倍……いや、それ以上といったところでしょうか」
「誰なんだそいつは!?」
「除霊師ですよ」
「除霊師」
「私の……弟です」
「弟……!」
「ずっと見逃してあげていたんです。復讐なんてしたくなくて。でも、あなたがその気なら、同じ苦しみを味わわせてやりますよ」
「や、やめろ」
砂原は笑みを浮かべたあと、ボルトを睨み付けた。
「罪に大いなる裁きを」
砂原は、ボルトの頭に手を置き、口を開く。
「さようなら」
死神は姿を消した。
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