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「除霊師? 妙な事をおっしゃいますね。世の中に、そんな現実味のないインチキな職業があるとお思いですか?」
砂原は柔らかく微笑み、またグラスを吹き始めた。
「……これ、あなたですよね?」
鋭い目付きで、珠奈は新聞の切り抜きをテーブルに置く。
砂原は目を落とす。
写真は六年前のもの。
白装束を着た砂原は、不思議と今よりも大人びて見える。
珠奈は、砂原が先祖代々伝わる除霊師一家「砂原家」の長男であることをかぎつけ、ここを訪れたようだ。
「お願いします。兄は殺人など犯していません。なのに、また罪を犯して、このままじゃ……いずれ死刑になります」
「あなたのお兄さんは、罪を犯した証拠があるから逮捕されているんですよね?」
「確かに証拠はあります。でも、兄の意思じゃない。兄は夕立の日だけ異常者になる。霊のせいとしか思えません!」
珠奈はカウンター席の机を強く叩いた。
砂原は物怖じしていない。
「己の犯罪を、霊のせいにしてはいけません」
冷静に答えた砂原を見て、珠奈は声を絞り出す。
「……霊の、せいなの……っ」
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