*74* 無垢な夢路をたどる

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「というわけで、みんなしばらくは来ません」 「そっか。じゃあ母さんは、もうちょっとオレが独り占めしちゃお。それっ」 「きゃー、捕まっちゃったー!」  がばりと羽交い締めをしてきたジュリに、口だけの抵抗をしてみる。もちろん逃げる気はサラサラない。  ふれたぬくもりが、いつものジュリだなって思う。  それでいて、包み込む腕の力強さは、昨日までとは全然違う。 「ねぇジュリ、大好きだよ」 「あっぶな……一瞬心臓止まるかと思った」 「えー? 思ったこと口にしただけなのに?」 「それを無自覚って言うんだよ」  いつもなら「オレもだよ」ってシャイニングスマイルを返してくるところなのに、今日のジュリは何だかセンチメンタルだ。思春期なのかな、なんて冗談は置いといて。 「いやぁ、ジュリに謝りたいことがあってさ」 「さてはご機嫌取りだな? 今度は何をしでかしたの。白状しなさい」  ひどい言われようである。普段のあたしの信用のなさよ。  でも何だかんだ話は聞いてくれるんだよね。……可愛いなぁ。 「あたしね、もうジュリのお母さんじゃいられないの。ごめんね」  ……ぎゅ。  ブラウスに刻まれたしわを目にして、抱く腕が強張ったことを悟る。
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