*73* 赤いギンガムチェックをまとって

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*73* 赤いギンガムチェックをまとって

 1羽のパピヨン・メサージュを、ゲストルームの入り口に向かって放つ。  純白の蝶はひらひらと光の粒子を舞わせながら、すぅ……とドアを透過して部屋の外へ。  十数分後、3回ノックを受けて、待ちかねていた彼女を招き入れるのだけど、その後ろにはもうひとり分の人影があった。 「紹介するわね、セリ。この子はアンジャベル」 「おぉ……!」  思わず感嘆をもらしてしまった。華奢な少女の背後でどっしりと構えるその迫力に、圧倒されてしまったからにほかならない。 「ごきげんよう、マザー・セントへレム。アンジャベル・ウィンローズと申します。アンジーとお呼びくださいな、オホホ、なーんちゃって」  目を引く赤いギンガムチェックのエプロンに、三角巾。  ふわふわの赤毛をフリル状に咲く赤いカーネーションのバレッタでまとめたその人は、存在感抜群のふくよかな女性。  三日月型に弧を描いたペリドットの視線が、ベッドで寝息を立てる少年から、あたしのもとへ戻る。 「ママから話は聞いたよ。えらく楽しそうなこと企んでるそうじゃないか、セリ様ー?」  そうして、そばかすのあるまあるい頬にくしゃりとえくぼを刻んだアンジャベル──アンジーさんは、パチンッとまぶしいウインクを炸裂させるのだった。 「ウィンローズ邸のコック長であるこのアタシが、とっておきサプライズのお手伝いをしましょうねぇ!」
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