*73* 赤いギンガムチェックをまとって

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 驚いたけど、同時に納得もした。  何でもそつなくこなすヴィオさんやリアンさんだ。普段の何気ない所作すら洗練されてるんだから、お箸が使えたって不思議じゃない。  そこへ「ネモもモネもアンジーもよ」と付け加えるオリーヴ。「わたくしが育てました」と誇らしげに胸を張るもんだから、ふたりして吹き出す。 「そうだね、レクチャーをおねがいしようかなぁ」  つられて笑ったジュリは、使い慣れたスプーンに持ち変えた。  お味噌汁から始まり、自慢の肉じゃが定食を口にしていく。 「何だろう、はじめて食べる味……素朴だけど深みがあって、やさしい味だ」  そうです、その通り。見た目はシンプルながら奥が深い。それが和食、とりわけおふくろの味なのです。 「ほっとする……」  おいしいね、とはにかんだ表情を目にしたら、それだけで胸までいっぱいになる。  やっぱりジュリは、あたしを笑顔にさせる天才だね。
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