*74* 無垢な夢路をたどる

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*74* 無垢な夢路をたどる

 後片付けを終えて部屋に戻ると、凪いだ夜色の瞳はじっと窓の向こうの青空を眺めていた。  敷き詰められた静けさの中へ、そっと1歩。 「お昼寝はしなくていいのかなー、ジュリくん?」 「さっき寝たばっかだよ。今夜眠れなくなっちゃう」  冗談めかして窓際まで歩み寄ったあたしに、振り返ったジュリがまだ泣き腫らした跡の残る目じりをへにゃりと下げる。 「何もしなくていいって言われたら、逆に調子狂っちゃって」  これで素なんだから、末恐ろしい子である。  料理に掃除に魔法のお勉強にと、毎日せかせかと動き回っている子だ。たまにはだらけようよと急に言われても、難しいんだろうな。 「母さんこそ、ゼノとヴィオさんは? 全然姿が見えないけど」 「色々あって、練武場で訓練してて。発端はネモちゃんなんですが」 「あぁ、何となく察した」  さっき様子をちらっと覗きに行ったら、もはや訓練ってレベルじゃなかったけどね。あのふたりの周りだけ、次元が異なっているに違いない。  そうでもなきゃ、穴やらヒビだらけの地面だとか、空中で木っ端微塵に切断される葉っぱだとかの説明がつかない。
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