*74* 無垢な夢路をたどる

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「木剣ってなんだっけ」  思わず2度目の疑問をつぶやいたあたしに、「やだなぁ、木でできた剣ですよぉ」と同じく見学勢のモネちゃんからの返答があった。 「ごめんなさいセリ様……ネモは未熟者です……明日こそは必ず夜のお供をさせてください……!」と色々アウトな発言をかましながら涙ぐむネモちゃんから熱烈ハグを受け、あわや窒息寸前のあたしを助けてくれる気はなかったらしい。 「こらー、姉さんたち! さっさと食堂に来ないとランチが冷めちまうだろうがー!」  そんな修羅場も、赤いギンガムチェックがトレードマークの彼女の登場で、終わりを告げることになったんだけどね。 「危ないから下がっていろ、アンジー」 「へぇ、まぁだやんのかい。食べないって選択肢があるとでも? セリ様お手製ランチなのに?」  しん……と静まり返る練武場。「早いとこ手を洗ってきな!」と容赦ない追い討ちがかかる。  強い、強すぎる。この瞬間、『アンジーさん最強説』が浮上した。神かよ。  隣で「ヴィオ姉様を黙らせるなんて。セリ様すごーい、神様だわ!」とモネちゃんがパチパチ拍手していた。神はあたしだった……?  とりあえず、アンジーさんに便乗。  しゅんと落ち込んだ子犬みたいなまなざしで見つめてくる方々には、「お残しは許しまへんで」と笑顔の圧力をかけておいた。
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