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「というわけで、みんなしばらくは来ません」
「そっか。じゃあ母さんは、もうちょっとオレが独り占めしちゃお。それっ」
「きゃー、捕まっちゃったー!」
がばりと羽交い締めをしてきたジュリに、口だけの抵抗をしてみる。もちろん逃げる気はサラサラない。
ふれたぬくもりが、いつものジュリだなって思う。
それでいて、包み込む腕の力強さは、昨日までとは全然違う。
「ねぇジュリ、大好きだよ」
「あっぶな……一瞬心臓止まるかと思った」
「えー? 思ったこと口にしただけなのに?」
「それを無自覚って言うんだよ」
いつもなら「オレもだよ」ってシャイニングスマイルを返してくるところなのに、今日のジュリは何だかセンチメンタルだ。思春期なのかな、なんて冗談は置いといて。
「いやぁ、ジュリに謝りたいことがあってさ」
「さてはご機嫌取りだな? 今度は何をしでかしたの。白状しなさい」
ひどい言われようである。普段のあたしの信用のなさよ。
でも何だかんだ話は聞いてくれるんだよね。……可愛いなぁ。
「あたしね、もうジュリのお母さんじゃいられないの。ごめんね」
……ぎゅ。
ブラウスに刻まれたしわを目にして、抱く腕が強張ったことを悟る。
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