*74* 無垢な夢路をたどる

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「ばかだね。嫌なわけないでしょ」  夜空の星は一切の輝きを失わずに、そこに在った。 「オレだけじゃない。これから生まれてくる弟や妹たちも、みんな家族で、母さんの味方だ」  あぁ……君はこんなにも、強い意志を宿した瞳をする子だったろうか。  優しさの奥に灯った、たしかな熱。  昨日の自分とは違う。君も、あたしも。 「ありがとう……」 「オレのほうこそ。『想い』を受け止めてくれて、ありがとう。あなたがオレの母さんでよかった。生んでくれて、ありがとう」 「……うんっ……」  親にとって、こんなに嬉しい言葉はないよね。  君がそばにいれば、あたしももっとずっと強くなれる。  不器用かもしれないけど、迷いながら、手を取り合いながら、1歩1歩しっかりと歩んでいこう。  滲む視界でひときわ優しく微笑んだ少年が、手を差し伸べてくる。 「──セリ」  呼ばれた名前。目を見開く頃には、両頬を包み込まれ、額がふれあった後だった。
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