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住んでいる場所は大失敗だけど高校生活は今のところ順調、だから私はこれから部活や恋愛なんかを頑張っていくつもりだった。しょうがなくだけど……。
どんな部活に入ってどんな生活を送ろうか。授業が始まってからも私はその事ばかりを考えていた。かなり妄想交じりで自分に都合が良い感じの考え事。
今のところ第一希望は球技系の部活だ。バスケ部なんていいかもしれない。女子に人気の球技の中でも運動量が激しいけれどそれが島暮らしストレスの発散になってくれるはず。私にはもの凄いシュートの才能があるかもしれないし、島暮らしの天才ポイントゲッターなんて呼ばれるのも悪くない。
それとも吹奏楽部とか演劇部なんてどうだろう。私はこれまでステージの上に立って目立ったという経験が無いからちょっと憧れる分野ではある。こんな日差しの強い所で運動なんてやってられないという考えもあるし、私にはきっと独特でオンリーワンの才能が眠っている気がする。
私のパフォーマンスで訪れた大勢の人々が沸いているのを思い浮かべると、ノートを取りながらにやけてしまった――。
放課後、私は約束通り友達と一緒に教室を出た。各部活の部室の位置を記した地図を片手に、校内の探索へと向かう。
「どこから行く?」
「外出たら戻ってくるのめんどくさいし室内のからにしよ」
まだどこに何があるのか分からない校内をあっちへ行ったりこっちへ行ったり適当に歩いた。入学式の時ほどではないが、部活の勧誘をしている先輩なんかもちらほらいて、いるけれど立ち止まって真面目に話は聞いたりせず、色んな部活を見ながら歩くことを楽しんでいた。
吹奏楽部に軽音楽部、茶道部なんかも外から活動の様子を覗いていって……。
そんな時だ――私にとって強烈な出会いがあったのは――。
「次の部屋の部活は何?」
私は友達に尋ねた。
「eスポーツ部だって」
「eスポーツ部?何それ?」
「七花知らないんだ。簡単に言うとゲーム部だよ」
「ゲームってテレビゲーム?」
「私もよくは知らないけど珍しい部活だよね。なんかこの学校は力入れてるらしいよ」
「へー。でも部活でゲームってね。それよりグラウンドのあの人だかりは何?女子ばっか。サッカー部あたりによっぽどかっこいい人でもいるのかな――」
「ちょっと七花。あぶな――」
危険を知らせる声が聞こえたと思ったら、窓から正面へ視点を戻す前に体へ硬いものがぶつかった。
続けて廊下全体に響く壊れる音。何かしらの機械が床に落ちて、ボディにヒビを入れながら形を変えた。
数秒の間、その廊下にいた人間達が固まる。
「あーあ。やっちまったねこりゃ」
そして、私とぶつかって機械を落とした女は軽い口調でそう言った。
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