第2話 それで修理代15万円ちゃらにしてあげるから

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「え。あ、そうなんですか」 「うん。驚いたでしょ。あんた1年生?」 「は、はい」 「何組?」 「1組です」 「名前は?どこ住み?」 「えっと戸来(とらい) 七花です。住んでるのは……その……どうど島のほうです」  私は自分の名前と一緒に自分が今住んでいる場所を嫌々口に出す。どうど島というのはたぶん正式名じゃなくて通称なのだけど、私はそれしか覚えていない。住みたくもない島の難しい漢字と読み方を覚えるのも嫌だった。 「ふーん。なるほどなるほど」 「あの、これ何の質問なんでしょうか……?」 「ちょっとついて来て」 「……はい」  私の質問には答えず、壊れた機械を拾い上げて近くの部屋に入っていく女に私は素直に従った。からかってただけとは言われたものの機械を壊した件については何も解決してないからだ。 「どうぞ。遠慮せず入って」 「お、お邪魔します」  女の後をついて部屋に入ると、見たことが無い光景に私は目を細める。向かい合わせで並べられたデスクの上にそれぞれ置かれたメタリックなパソコン。モニターには銃を持った軍人の姿があった。  聞かなくてもここがeスポーツ部の部室だということは分かる。 「あ、お友達はちょっと外で待ってて。それか先に行ってていいよ」 「え、ちょっと」  強引に扉を閉めて、私に何もさせず閉じ込める女。 「それでえーっと。1年1組とらい ななさんだよね」 「はい……」 「漢字は?」 「戸籍のこでとです。らいは来る。ななは――」 「はいはい。へー。これでななって読むんだ……」  私の不安はお構いなしで近くにあった机で何かの紙に何かを記入していく女。まさか、からかったというのも嘘でやっぱり修理代を請求してとかなのか。 「じゃあこれ。この紙に保護者の名前と印鑑押して明日ここに持ってきて。それで修理代15万円ちゃらにしてあげるから」  渡された紙には1番上に「入部届」という文字。そこには私の氏名と――入部を希望する部活にeスポーツ部という記入があった。
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