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「あ、新しい服、ここに置いておくね」
自分の服に手を掛けたら、彼女はそそくさと退出してしまった。
アパートの脱衣場は大柄の僕には狭く、Tシャツを脱ぐときに手が壁に当たった。
「ハ……クシュッ」
身震いが襲い、僕は服を脱ぎ捨てて急いで体を洗い、湯に身を沈めた。
生き返るようだ……
あのままでいたら、本当に風邪を引いてしまったかもしれない。
彼女は、美術館から帰るところだったらしい。
僕も同じ場所へ行っていたと告げたとき、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
印象派が好きだと言っていた。
なるほど、モネの展覧会に赴くはずだと納得した。
そして、帰路で僕を見つけたというわけで。
ここへ来る途中、男物の洋服を見立ててくれた。
とっくに雨は止んでいたけれど、僕たちはそれには触れなかった。
体が熱い。
服を着てバスルームを出ると、涼しい風が吹いてきた。
冷房を入れてくれたようだ。
「ありがとう。おかげで温まったよ」
「そう、良かった」
はにかむ彼女に、胸の奥が焼けるような熱を覚える。
「もう少しここに居てもいい?」
髪を掻き上げながら問うと、彼女は恥ずかしげに小さくうなずいた。
「うん。適当に寛いでて。……私もお風呂入ってくるね」
無防備な言葉に、期待していないと言えば嘘になる。
用意された麦茶を喉に流し込み、僕は背後のベッドへもたれ掛かった。
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