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軽い関係なら、その方が後腐れがなくて良かった。
もし、本気になってしまったら……後悔するかもしれない。
目を合わせた瞬間、そうなりそうな気はしていた。
でも、直感には抗えなかった。
「おまたせって言ったら、変かな」
部屋へ戻ってきた彼女が微笑み、僕の予感が的中したことを確信した。
「いや。待ってたよ」
立ち上がり、しっとりと濡れた彼女の髪を撫でる。
「綺麗だよ」
「……女性の扱いに慣れてるんだね」
潤んだ瞳と、半開きになる唇。
「まあ、否定はしないけど」
「正直なんだ?」
くすりと笑んだ彼女は、ゆっくりとまぶたを下ろした。
「君の名前は?」
「み、みや……」
キスの途中で尋ねると、ミヤは息を切らせながら答えた。
これまで、一夜の関係を持ったことは何度かある。
でも、名前を覚えたいと思ったのは初めてだった。
「あっ……あなたの、名前……は?」
泣きながら僕を見上げるミヤに、吐息まじりの答えを返す。
「素敵な名前……」
恍惚の表情を浮かべながら、ミヤは何度も僕の名を口にした。
そんなに呼んだら、愛着が湧いてしまうんじゃないか。
君の名を囁くたび、僕がそうなるように。
愛らしい顔も、声も、仕草も。
もっと、感じたくなってしまう。
いちいち反応を返してくれる彼女が、愛しくてたまらない。
ミヤの白い肌に、僕の証を。
僕の心に、ミヤの姿を焼き付ける。
あと何回君に触れられるかと、心を悶えさせながら。
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