おやすみ

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 学校に行く途中の川沿いに黄色とピンクの百合の花が咲いていたので足を止めた。百合の花が咲いているのは白いフェンスの脇。川は土手に入れないようフェンスで区切られている。水深は深いわけではない。土手を含めて川幅六メートルくらいの小さな川だ。鴨や鷺がいて魚がいるのだろう。橋の上から釣りをしている人がいる。百合の花は誰かが植えたのか。薔薇の花の隣で花びらを開いていた。  私はスマホをリュックのサイドポケットから出して写真のアプリを開いた。百合の花を撮る。学校に着いたら親友の星奈(ほしな)に見せよう。私も好きだが星奈は人一倍に花が好きだ。そう思って撮った写真をチェックすると写真に手が写り込んでいた。真っ白な細い手。私は幽霊がここに居ると直感した。 「幽霊さん、こんなとこにいたら駄目だよ。ここに怨念でもあるの?」 「花が好きだし、好きだった人が釣りをしたから。それにここは猫も居るし」  幽霊が姿を現した。髪が長くて、ピンクのワンピースを着ている。年齢は二十代前半だろう。とても細い。病死か。 「成仏しないと、自分に悪気はなくても怨霊になるんだよ。今日はこれから学校だから付き合えないけど、また会ったら神社に連れてってあげる」  私はそう言って駅に向かった。茶トラの猫がいた。
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