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部活の時間になった。部室でユニフォームに着替える。体育館へ行くと一年生の女の子におじさんの霊が憑いていた。おじさんは五十代くらいでTシャツにデニムだ。少し髪が薄くなって白髪交じりになっている。私は後輩の女の子に言った。
「最近、変なことが起きない?」
「変なこと?金縛りにちょくちょくあうだけですよ。おかげで寝不足で調子悪いんです」
私はどうしようか悩んだ。部活の休憩時間にみんなが飲み物を買いに行ったとき体育館に残った幽霊に言った。
「おじさん、いつまでもこの世を彷徨ってたら駄目だよ。なんで高校生の女の子についてるの?」
「俺の娘もこれくらいのときがあったなと思ってな。娘は病死したんだ。二十一歳だった。俺は悲しくて、悲しくて。そんなとき仕事で来てたこの町でぼうっと道を横断したらトラックに撥ねられたんだよ」
私は眉を下げた。不幸って重なるものなんだな。
「娘さんに会いたいのなら成仏しなくちゃ。今日は遅くなるから無理だけど、明日の土曜日は部活が午前中だけだから神社に連れてってあげる」
おじさんは肩を竦めた。
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