がらくたサバイバル

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　新品だったはずというのは記憶違いで、そのような状況で使ったことがあっただろうか。

　あるいは、風通しが良いとは言えない環境で長期にわたって保管していたために、素材のゴムが劣化したのだろうか。
　そういえば、買ったときには見られなかった細かなキズが浮いているような気がした。

　記憶違いと言えば、逆のパターンもあった。

　サークルの仲間たちと鍋パーティをしたときのことだ。
　実家暮らしの理沙が土鍋を持ってくるというので、カセットコンロをわたしが買うことにしたのだ。

「緊急時にはガスが止まるかもしれないからね、あんたもカセットコンロの一つぐらい用意しときなさいよ」

　母が電話で言っていたことがふと頭によぎったこともあり、仲間内の宴会のたびに使えるし買っておくのも悪くないかと、ホームセンターで見繕った。
　メンバーのひとりの下宿で開いた鍋パーティは盛り上がり、その晩は雑魚寝(ざこね)で夜を明かした。

　翌朝、箱に入れたカセットコンロを自転車の前かごでカタカタ揺らしながら、わたしは自宅に帰った。
　授業に出る前に、しばらく使う予定のないカセットコンロを片付けてしまおうと押し入れを開けた。

　どこに置こうか迷った挙句、ぎゅうぎゅう詰めの仕切り棚の上に無理矢理場所を作り出すため、そこに載っていた物を寄せると、唐突に現れたのだ。今仕舞おうとしているのとほとんど同じ、カセットコンロの入った箱が。

　持っていないと思って新調したのに、以前に買ったことがあったらしい。
　自分の記憶の不確かさには、ほとほと呆れてしまった。