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思えば、幼少期から兄ふたりに不要物を押し付けられて生きてきたから、わたしの部屋は人生のいつをとっても、がらくたを溜め込んだ雑多な空間だった。
「俺もう要らないんだけど、琴美、これ欲しかったりする?」
そんなふうに聞かれたら「捨てちゃったら終わりじゃん。もったいないからわたしがもらうよ!」と言い続けてきたわたしなのだ。
今は必要がない物でも、いつか何かに使えるかもしれない。
両親からも「物は大切に」と聞かされて育ってきたし、今さらワンルームに引っ越したぐらいのことで性根は変わらない。
理沙のようなシンプルな暮らしをするには、わたしには物欲があり過ぎた。自由なキャンパスライフも、このにぎやかで魅力的な街も、とにかく誘惑が多い。
ただでさえぼんやり欲望のままに生きているわたしが、家を出たときよりも余分に何かを携えて帰路につくのは仕方がないことなのだ。
出先で手にした物を部屋に持ち帰ってきて、夜だし疲れてるし勿体ないし捨てる理由もないし、とりあえず押し入れに仕舞う。
また明日考えればいいや、今は面倒だし。その繰り返し。次の日になれば別の物が詰め込まれる。その翌日にはまた別の物が。
物という物が無造作に詰め込まれた我が家の押し入れは、もはやどこに何が入っているのか持ち主のわたしにもわからない。
それどころか、自分が何を持っているのかさえ忘れてしまっている。
以前買った物が必要になっても、押し入れをひっくり返して探すことに時間を割くぐらいなら、また新しく購入することを選んだ。
わたしにとっては、自分の家に物を所持する喜びよりも、売り場で物を選んで買う瞬間のときめきの方がはるかにまさっていたのだ。
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