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 サークルの先輩たちの複雑な恋愛模様について情報交換しているうちに、夜も更けてきた。  出身も専門も異なる学生が集う、大学の人間関係はややこしい。  仕舞い込んだきり忘れてしまえる「物」とは違って、ときどきこうやって復習する必要がある。アウトドア活動そのものよりも、よっぽど頭を使う。  久しぶりに催した宅飲みだったが、我が家は最寄り駅から遠いので理沙の終電の時間を考えて、早めにお開きにすることにした。理沙を駅まで送っていくため、わたしも外に出る身支度をする。 「また押し入れ開けるなら私、目を(つむ)っとくよ」と下手なウインクをする理沙に、日々使う衣類はベッドの下の引き出しに収納しているから、押し入れをいちいち開ける必要はないのだと説明する。 「琴美の押し入れ、呪いっていうより魔法の押し入れだね」  アルコールに弱くチューハイたった二本で酔いの回った理沙は、何重にも巻いたマフラーに顔を(うず)めながら、まるで子どものような戯言(ざれごと)を繰り出してきた。 「だって普段使いする物入れてないんなら、物は仕舞われたままでこっちからは一方通行でしょ? そういう閉じた世界って、中でなにか不思議なことが起きていてもおかしくないと思わない?」 「ファンタジーかよ」  普段は現実的なのに、酒が入ると童心に帰る理沙に半ば呆れながら、ふたりで部屋を後にした。  玄関の扉を閉める間際、暗くなった室内で見慣れない淡い光が(とも)ったような気がした。  アルコールには強いはずのわたしまで、理沙に感化されてしまったらしい。この時点では、それぐらいにしか捉えていなかった。
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