がらくたサバイバル

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 わたしは、がらくたに人生を救われている。以前までも、そしてこれからも。  最低限の物しか持たない暮らしが注目される世の中だけど、わたしはまだまだこの世界のあらゆるものに執着していたい。  そんなわたしにとって押し入れは、生きていくためになくてはならない存在と言っていい。  その押し入れというのは、わたしが二年前からひとりで住んでいるマンションの一室、リビングの隅にある押し入れのことだ。  床から天井まで達した縦長の丈夫な開き戸が、壁に開いた枠にはまっていて、力を入れてぐぐっと開けるとそこには広い空間が現れる。  人が暮らしていく上で大切なのは、何といっても収納だろう。  大学に無事合格を果たし、この街でひとり暮らしを始めることが決まったとき、わたしが部屋探しで重視したのは、物がどれだけ仕舞えるかということだった。  というのも、この街は家賃がとにかく高いのだ。田舎で生まれ育ったわたしにとって、都会のワンルーム住まいがこれほどお金のかかることだったとは予想外だった。  初めての部屋探しについてきてくれた両親も地元でずっと生きてきた人たちなので、わたしよりずっと年を食っているというのに、ただ狼狽(うろた)えるばかり。 「琴美(ことみ)、あんた活発だし、どうせ外で遊びまわってあまり家に長居しないでしょ。そこそこの物件でいいわよ。ねっ、お父さん」  不動産屋で家賃の相場に凍り付く父の横で、母が取り成した。  わたしが進学するのは私大で学費も安くないのに、まさか家賃までもがこんなにかかるとは。だれも言葉にはしないが、一家三人の間に共通の緊張が駆け巡った瞬間だった。 「待って。確かに部屋は狭くてもいいし、不便な立地でも我慢する。だけどわたし、なにかと物持ちだから収納スペースはそれなりにないと困るよ」
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