白いワンピースの裾が汚れている

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 暑いから屋内に入ろう。そう言って足を運んだ近くのショッピングモールで七夕の笹を見つけた。今日は七夕だった。願い事を書かなきゃ、そう思えるほどの純粋さはなくなってしまったけど、もしかしたら叶うかもしれないという思いを捨て切れていなかった。僕はやっぱり中途半端だった。でもそれは彼女も一緒だった。 「ねえ、あれ、書こうよ」 「うん」  短冊を一枚手に取る。笹を見上げてみると、赤、青、黄の紙切れが冷房の風にわさわさ揺らされていた。『ゲーム機がほしい』、『足が速くなりますように』、『健康第一!』。地元の七夕祭りを思い出した。そのころの彼女を知らないけど、きっと、僕とは違い一人で苦しんでいたんだろうなと思う。 「叶うかな」  僕は彼女の言葉に否定も肯定もしなかった。できなかった。悲しそうな笑顔を浮かべる彼女の短冊には、ひとこと、『幸せになれますように』と丸っこい文字が書かれていた。 「君は何を書くの?」 「紬が幸せになれますようにって」  彼女はまた悲しそうに笑ったあと、自分の短冊に『〇〇が』と僕の名前を書き足した。それから「私は死ぬから、この短冊たちの中で一番叶いやすいと思うよ」と囁くように言った。短冊は、笹の中間辺りに隣同士括り付けてやった。  僕は、彼女がわずかな時間しか眠らないことを知っている。親に殴られる過去の自分が夢に出てくるから上手く眠れないと言っていた。ある意味で死ぬことと睡眠は同じなのではないかと思った。
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