少女漫画と立花さん

1/32
前へ
/32ページ
次へ
 あの頃、目に映る世界はキラキラした夢で溢れていた。  それこそ、一つに絞るのが難しくて両手から溢れるくらいにたくさんの“夢”を持っていた。 「まま! みはるね、おおきくなったら、ケーキやさんになる!」 「あら、どうして?」 「ケーキをいっぱいたべられるから!」 「ふふ……じゃあ、お菓子の作り方をたくさん勉強しないとね」  夢を見続けていればいつか叶う。頑張れば報われる。  そう信じて疑わなかった。  けれど、世界はそんなキラキラしたものではなくて、幸せな未来なんて夢見るだけ無駄。  ここは御伽噺(おとぎばなし)の世界ではない。  ただの、薄汚れた現実世界だ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加