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私は再び産まれるのだ、と悟った。あの暖かい水の中から明るい光の元へと滑り落ちたように。ただ、今私の周りにある水は冷たい。掻いた手が空気に触れたのも束の間、私は水に攫われた。心の底から恐怖が這い上がってくる。叫ぼうとした口に水が入り込んで声を塞いだ。そして。光が見えた。大きくなる光が私を包み込む。 ああ、私はもう一度産まれるのだ。 大きく揺れる水に身を任せ、光の中を行く。やがて光は小さくなって、ばしゃん、と顔が水の外に出た。暗い天に、そこだけ大きな光が静かに輝く。この水に入る直前に見た光と同じ光。私は空気を吸い、その光に向かって泣き叫んだ。
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