なお子

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

なお子

   「 やあなお子、また眠れないのかい? 」 30代半ば、看護師のなお子。  彼女は俗に言う、メンヘラである。  「 さとしからの連絡が、半日も返ってこないの 」 毎回呼ばれて行けば、その度に違う男の名前。  「 また新しい彼氏? 」 「 彼氏なのかな。私は、好きなんだけどな 」 「 好きな人が居るだけで、君は幸せだよ 」 「 …そうなのかな 」 「 今日は一人寂しく眠らなくて良いから。安心して 」 目の下に出来た隈。出会った頃から徐々に痩せて行く身体。つまりは、寝ていない。食べていない。  異性の魔法にかかるならば、良い魔法に限るな。と、苦笑しながら、優しく疲弊して行くなお子の頭を撫でる。  「 大丈夫。君を本当に愛してくれる人は、必ず現れるから。そしたら、こんなに苦しまなくてもいいからね 」 「 …うん 」 ベッドの側に散らばるのは、睡眠薬。  こんなものに頼らなくても良いように、今日は俺が癒してあげよう。  「 さとし、何してるのかな 」 ブルーライトを放つ液晶を、何度も見ては伏せるのを繰り返し、涙を堪えるなお子。  こんな人達のことを世間では、愛が重すぎるだなんて言う。何て欲張りなんだ。人は皆、愛を求めるくせに、それが溢れたり大きすぎたりすれば、文句を言うだなんて。どうかしている。 せめて夢の中では、その愛を存分に捧げる相手との逢瀬を。と祈るよ。  大丈夫。誰に何を言われようと、愛せることは素敵なことだから。    「 なお子、おやすみ 」 「 〇〇、おやすみ 」  
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!