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なお子
「 やあなお子、また眠れないのかい? 」
30代半ば、看護師のなお子。
彼女は俗に言う、メンヘラである。
「 さとしからの連絡が、半日も返ってこないの 」
毎回呼ばれて行けば、その度に違う男の名前。
「 また新しい彼氏? 」
「 彼氏なのかな。私は、好きなんだけどな 」
「 好きな人が居るだけで、君は幸せだよ 」
「 …そうなのかな 」
「 今日は一人寂しく眠らなくて良いから。安心して 」
目の下に出来た隈。出会った頃から徐々に痩せて行く身体。つまりは、寝ていない。食べていない。
異性の魔法にかかるならば、良い魔法に限るな。と、苦笑しながら、優しく疲弊して行くなお子の頭を撫でる。
「 大丈夫。君を本当に愛してくれる人は、必ず現れるから。そしたら、こんなに苦しまなくてもいいからね 」
「 …うん 」
ベッドの側に散らばるのは、睡眠薬。
こんなものに頼らなくても良いように、今日は俺が癒してあげよう。
「 さとし、何してるのかな 」
ブルーライトを放つ液晶を、何度も見ては伏せるのを繰り返し、涙を堪えるなお子。
こんな人達のことを世間では、愛が重すぎるだなんて言う。何て欲張りなんだ。人は皆、愛を求めるくせに、それが溢れたり大きすぎたりすれば、文句を言うだなんて。どうかしている。
せめて夢の中では、その愛を存分に捧げる相手との逢瀬を。と祈るよ。
大丈夫。誰に何を言われようと、愛せることは素敵なことだから。
「 なお子、おやすみ 」
「 〇〇、おやすみ 」
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