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半分メランコリー
『おやすみ』とスタンプを送信する日々が続いた。
この無機質な感覚はなんだろう? ルーティンな感じもする。
沙穂からの返信も『おやすみ』と返信のスタンプ。
もう2週間は会っていないな。
僕が、沙穂と付き合い出したのは、大学1年生の時。同じテニスのサークル仲間だった。
あれから7年。
付き合った当初は、毎日のように「愛」を囁きあった。こんなにも幸せな充実した毎日でいいのだろうか、とも疑った。
僕たちは、気がつけばお互いに26歳になっていた。
周りからも親からも「結婚は?」と言われるようになっていた。
しかし僕は、結婚という重い決断が下せないでいた。
結婚式っていくらかかるんだ? 貯金50万しかないし。
赤ちゃん? 可愛くて仕方ないけど、僕がパパになるなんて資格ないだろう。
1人で住む自由、例えば、趣味であるクラシックカーの維持だとか、熱帯魚の飼育だとか、そういった自分の聖域を折半するとなると気が重くなるのである。
何よりいまさら、沙穂と毎日を同じ家で過ごす必要があるのだろうか?
僕たちは、結婚という機運を逃したのかも知れない。
倦怠期という言葉を通り過ぎて、僕は何かから解き放たれたかったのかも知れない。
沙穂の存在がどれほどまでに大切だったか気づくまでは。
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