沙穂の気持ち

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出来上がったパスタに冷えた缶ビール。 いただきますと言ったところで、沙穂は「で?」と口を開いた。 「報告って何よ?」沙穂らしいストレートな物言い。 「あ、うん。・・・今度さ、大阪に異動っていう辞令が出た」 「え、そうなの? それで?」 「うん。行くしかないかなーって・・・」 「東京を離れるのね」沙穂はパスタをフォークに絡めて言った。 「すまん」 「なんで謝るのよ、で、直くんは、私にどうして欲しいわけ?」 「いや、どうもこうも、遠距離恋愛になるな、って」 「それだけ?」沙穂はビール片手に首を傾げる。 「それだけ」 「・・・直くん、私たち、別れよっか」 「うん?!」僕は食べていたパスタを喉に詰まらせた。 「結婚から逃れたい、要はそういうことでしょ」沙穂は言った。 「いや、まあ、僕にはまだ自信がなくて・・・」 「直くんはなんにもわかっていない。そこは『結婚してほしいから俺について来い』でしょ、普通」 僕は沙穂に言われて、一気に追い込まれた。 同時に、自分は自分のことしか考えていない甘えん坊だということも。 でもいいのだろうか? 沙穂だって仕事がある。大学を出て、沙穂は希望通りアパレルメーカーに就職したのだから。 今の時代、寿退社なんて時代でもあるまいに・・・。 「沙穂に『付いて来い』なんて言えないよ」 「直くん、あなた、いつまで経っても子供ね。そういうところも好きだったけど。いつまでこの関係を続けたいと思っているの? もう私達、付き合って7年だよ。そこは直くんが腹を据えるところでしょ、結婚とか考えているの?」 沙穂に図星を射抜かれた。 「結婚する理由ってなんだろう?って・・・」僕は思わず呟いた。 「サイテー。そんなことしか考えていなかったのね。今日は直くんとの最後の夜になるわね」 「ごめん、謝るよ。別れたくない」 「無理。丁度良かったのかも。私達のこの関係、ズルズルと続けたくはないし」 こんな展開は予想してなかった。 パスタはすっかり伸びて冷めていた。
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