愛、知ってる?

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そして計画が実行されたのは調度新年度が始まる四月一日、まだスーツに身が馴染んでない若い新入社員が行き交う中で一流企業のワールドソーシャル社でも新入社員達への挨拶を終える所。 「それでは皆さん頑張ってください。」 拍手の中ホールから出てくると少し顔が険しい白石が待ち構えていた。 「社長、今すぐ大会議室に来るようにと福浦相談役が。」 「なんで相談役が来てるんだ?今日株主会もないだろ。」 「分かりません、とにかく来るようにとだけ言われましたので。」 かなりの株を所有していて経営にはノータッチである福浦相談役であるが相談役という権力や財務省からの天下りなどもあり大宮もあまり強くは出られない数少ない人物。 相談役の福浦が勝手に会社に来ることなどそうそうないので大宮は関わりたくないと機嫌が悪くなった。 「失礼します。」 大宮と白石が揃って大会議室に入ると福浦相談役を筆頭に数人の株主が居る。 みんな株の保有数が多い株主ばかりでその分みんな権力もある人たちだ。 その中で福浦の隣で秘書の様に立っていたのは小沢で白石はすぐに気づいたが何も言わずにいた。 大宮は面識がなかったので普通に秘書と思ったのだろう。 「大宮君、来てもらって早速だが君には取締役を降りてもらう。」 「いきなりなんですか福浦さん、降りてもらうって何事ですか?」 「心当たりはないってことですか?」 「もちろん、会社経営も順調ですし降ろされる理由がないです。」 青天の霹靂の場面でも余裕を見せる大宮にならと福浦は小沢に合図を出して準備をさせた。持って来たノートパソコンを操作して繋いであった壁の大画面に映し出されたのは大宮があるビルの一室に入って行くもの。 「これは私ですね、これがどうかしたんですか?」 「貴方が入って行かれたこの部屋、動物や遺跡の出土品の密輸を行っている組織の所有している部屋で所謂取引を行う場所ですよね?」 「何言ってるんです、ここは知り合いがいるんです遊びに行ってもいいでしょ?」 「足掻いても無駄ですよ、今日ここに家宅捜索が入ってます。このように。」 小沢が操作すると画面には物々しい騒ぎの人だかりがあり、先程の写真の部屋で段ボールが運び出されたりと小沢の言った通りの様子がライブ映像で映し出されたが大宮の余裕はまだ続いた。 「あー、そんなことになっていたんですね。密輸なんて知らなかったなー。」 「大宮君まだそんなこと言ってるのかね。」 「だって俺は知らなかったですから、その密輸していた人と関係あるとは言い切れないでしょう。」 大宮が密輸に関わっているのは明らかだが今の段階では大宮の言う通り決定打の証拠がない。
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