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「ねぇ、大丈夫だった?」
ジッと彼の目を見ていると、「ここ、むつみ荘ですか?」と、ボソボソと聞き取りづらい声で少年が確認してきた。
「うん。僕はね、ここの管理人の鳥飼睦」
「お兄さんが管理人?」
「元々はじいちゃんが管理してたんだけど、今年から僕が譲り受けたんだ。今までもほとんど料理や掃除は僕が担当していたから、実質仕切ってたようなもんだけどね」
少年が、睦の頭からつま先まで訝しむように確認する。
納得していない様子に溜め息を吐いた睦は、「これでも一応24歳なんだよ僕。まぁ、髪の毛も長くて茶色いからチャラそうに見えるかもしれないけどさ」と、肩に掛かった焦げ茶色の髪の毛をさわりながら、ふにゃりと笑う。
色白で瞳が大きく黒目がちで童顔。第一印象で頼りなさそうに見えるのはいつものこと。もう少しガタイがよければ印象が違うのかもしれないが、筋トレをしても全く筋肉がつく気配すらないのだからしかたがない。
「ところで、君はなにくん?」
「三崎奏ですけど」
「みさき……」
顎に手を当て、眉根を寄せる。聞いたことがある名前に、なんだっけ? と考えていた睦は、突然目を見開き叫ぶ。
「あぁー!!!!!!!」
大きな声にびっくりした奏は、ビクッと肩を震わせ眉間に深いしわを刻んだ。
「なんで僕、気づかなかったんだろ。じいちゃんから、写真とプロフィールを譲り受けていたのに。あっ、これだ、これ」
睦は、目が半分隠れている奏の前髪を上げた。
「前髪伸ばしすぎ。だから気づかなかったじゃないの! 目、悪くなるよ?」
「余計なお世話です」
奏は、睦の手首を掴んで下げた。
高校生ってもっと活発で明るいイメージだったけれど、この子は違うのだろうか。
「でもね……」と、口を開きかけたときーー
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