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「甘ったれな事言ってんじゃねーぞ三蔵。今、俺は苛々してるのが分かるよな?黒風が本気で俺の事を助けに来たって保証はどこにもねーんだよ。なら、奴が本気で俺を助けに来たなら折れるよな?妖なんだから折れてもすぐ再生すんだろ。」
悟空の言ってる事はごもっともだ。
確かに黒風が嘘をついてる可能性はある。
「だけど、あの目を見たら嘘なんか付いてないって思ったんだよ。」
「演技なら誰でも出来るだろ。」
悟空は乱暴に俺の服の胸元から手を離した。
そのまま少し大きめの石を拾った悟空は、しゃがみ込んでいる黒風の前に転がした。
「ほら、拾って来てやったからさっさとしろ。」
「こ、これをしたら信じてくれるの?」
「さぁな。それはお前次第だろ。」
悟空がそう言うと、黒風は石を持ち上げ自分の指に叩き付けた。
ゴンッ!!
痛そうな音が耳に届く。
黒風は苦痛の声を出しながらもう一度、指を叩き付けた。
「おい!!ご…。」
俺が悟空に声を掛けてると、悟空は黒風の前まで歩いていた。
そして、黒風は再び指に石をぶつけようとしたのを悟空が止めた。
パシッ。
黒風の指がボンボンに腫れ上がり、指の方向が少しおかしな方に向いていた。
涙を流しながら黒風は悟空の顔を見上げた。
「ご、悟空さん…?」
「悪かったな黒風。お前の事を試すような事を言って。」
悟空はそう言って、黒風の指に自分の指を噛み切り、血を指に垂らした。
すると、指の傷が見る見る内に治って行った。
「俺の事、まだ好きでいてくれたんだな黒風。ここまで来てくれてありがとうな黒風。」
悟空がそう言うと、黒風は泣き崩れた。
その光景から目が離せなかった。
悟空は黒風を疑ってなんかなかったんだ。
黒風がどこまで本気なのかを測ったんだ。
例え、やり方が汚いとしても悟空は確かな感情を確かめたかったんだ。
黒風が自分に対して抱いている好意を。
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