4-1.三夜 ※

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4-1.三夜 ※

 今度はそれほど日をおかずに皇から召命があった。俄かに召使たちが慌ただしくなる。一度目とも二度目とも少し異なり、ルクレシスを前にすると誰もが「ランスの御方様、おめでとうございます。」と言祝ぐ。    少年神官も早々にやってきて、ルクレシスに準備を促す。  全く気が乗らないが、前のように我儘を言うわけにはいかない。自分の一挙手一投足が彼らの命運を左右するのだから。  諦めて身を委ねる。  身を清めた後は、香油で全身をマッサージされる。髪の1本1本にも香油が揉みこまれた。肌と髪を整えた側仕え達が下がると、後は皇を受け入れるための準備の時間となる。 「力を抜いて下さいませ。」  まず蕾に潤滑油を纏わした指先がくぷんと入って来た。毎晩繰り返されても、最初のこの瞬間は背筋が粟立つ。思わず腰が逃げそうになっても、優しい仕草で、しかし絶対に力を抜かずに身体を押さえ込んでくる。ルクレシスは枕に顔を(うず)めてやり過ごす。  指先が入り口の襞を入念に捏ねるように動かされる。神経の塊のそこを入念というより執拗な程に刺激されて、下腹を熱が暴れ回る。  強く奥歯を噛み締めないとあられも無い声を上げてしまいそうだ。  浅い所はもう止めて欲しいと思ったが、指が体内に侵入してくるのも止めてもらえるなら止めて欲しい。叶うはずもないので、敷布を掴んで異物感をやり過ごす。  痛みはない。むしろ痛みというより、頭を溶かすような熱に必死で耐えなければならない。 「息を止めないで下さいませ。そう、息を細くはいて下さい。御上手ですよ。」  声に合わせて必死に息を吐くと、隙を狙ったようにもう一本指が侵入してくる。 「ひっ!…ぅ…」 「大丈夫ですよ。すぐにでも皇の恩寵を頂戴出来るように十分にさせて頂きますから。」  全く有難くない心遣いだが、前回、すぐに皇を受け入れられなかったため、彼は十分に拡張しなければという使命に燃えているらしい。  実のところ水の神官は侍従長から、受け入れた際に怪我してしまわないように充分に拡げて送り出すように命じられている。  前回の皇は珍しく配慮のある抱き方をしたが、今回もそうだとは限らない。むしろ一度目の苛烈さの方が本性だからだ。それをよく知っている皇の侍従長は、三度目の召命の宣下を伝えに来た際に、併せてランスの客人付きの侍従長にそう命じて帰っていたのだ。 「う、あっ、むりっ…」  二本の指でもきつい。もう終わりにしてほしい。 「御上手に受け入れて下さってますよ。三本目まで入れさせて頂きますからね。」  穏やかに宥めるように声をかけられるが、もう無理と思うところにもう一本が差し込まれる。許容を超える挿入に痛みが走る。 「ん、っぐ…」  それでも止まらない指で中がかき混ぜられて香油の粘着質な音がぐちゅぐちゅと響く。宦官の指が自由に抜き差し出来るようになると、やっと後孔から指が抜かれた。  抜かれる感覚に背筋が粟立ち、「う、ぁっ」と鼻にかかった声が出てしまう。 「最後に失礼致しますね。」  責め苦から解放されたと脱力していたところに、指とは全くちがう硬質のものが宛てがわれる。逃げる間もなく、何か質量のあるものが後孔に押し込まれた。散々拡げられたせいで、それはずるんと体内に入り込んできた。  宦官が体内に挿入したのは、ほぐした口が閉じないように開いておくための石で作られた張型であった。張型の根元は一度すぼまっていて、すぐに抜けてしまわないような仕様になっていた。 「皇のお求めがあったら、ここに指をかけられるようになっているので、抜いて下さいませ。」  体内に留置された硬い異物に、内臓がせり上がってきているようで気持ち悪い。 「すぐに御身体に馴染みますから。すこし休憩致しましょうね。」  宦官はあやすようにルクレシスの腰をなぜ、強ばった身体をマッサージしていく。ルクレシスが異物感に幾分か慣れて、力を抜けるようになったところで、宦官がルクレシスの身体を支えて、うつ伏せから仰向けに変える。  なじんできたと思っていたものが、身体を動かした瞬間に内壁をえぐる。思わず敷布にすがって、腹の奥の疼痛に耐えなければならなかった。  チリリン。それなのに涼やかな音がする。  張型から鈴といくつかの宝石が下がっていたようで、身体を動かすと涼やかな音をさせる。  こんなものにこんな飾りは必要なのか。  少年は両の胸の飾りにも香油を塗り、先をつまむ。ここは連日、少年に弄られ続けている場所で、触られただけでも脳と腰が刺激される。条件反射で勃ち上がってくる自分のものが恨めしい。 「いっつ!」  丹念に捏ねられて、腰が疼いてきたところに、急に痛みが走る。少年が宝石と鈴のついた飾りを乳首にクリップで取り付けていた。 「ちょっと痛いかもしれませんが、ご容赦くださいませ。」ともう片方にも揃いの飾りを取り付ける。 「ひっ!」 「あぁ、とてもお美しいです。こちらと揃いの飾りに致しました。あとは、こちらにも…」  そう言って緩く兆した陰茎の根元にも揃いだという鈴と宝石の飾り紐を巻き付けた。そして後孔の張型から垂れ下がる飾りの具合を真顔で確かめた。    満足が行ったのか、ぷっくりと立ち上がったままにされている胸の赤みが透ける程薄い紗の羽織をまとわせる。下衣もなく、肢体や全ての飾りがさらけ出されたままになる。  侍従たちも出来上がりを口々に賞賛の言葉をかけてくれるが、どこに褒める要素があるのか皆目分からない。お似合いとは。  前はどんな恥辱も聞き流すことが出来たのに、後孔に咥えている質量と動く度に響く鈴音が否が応でも、ルクレシスに現実逃避させることを許さない。  
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