4-1.三夜 ※

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「悦い格好にされたな。」  皇の寝室に召し上げられると、カウチで本を読んでいた皇が目を上げ、ルクレシスの姿を見て嗤う。  ルクレシスは自分の珍妙な格好を思うと羞恥で全身にかっと血がめぐる。動悸がしてくると両胸が余計に疼いてしまい、無意識の内に内股を擦り合わせてしまう。その度にチリンと鈴の音がする。  羞恥に震える姿が皇の嗜虐心を煽っていることに気が付かない。  ルクレシスは鏡の前に立たされ、衣服を脱ぐように命じられた。服と言っても肩から掛けられた薄布しかないのだが、払い落とすには若干の思い切りがいる。透けた布一枚無くなるだけで心許ない。  ルクレシスの後ろに皇が立つ。ルクレシスの頭は皇の胸にやっと届く位だ。緩く夜着を着流した皇と奇天烈な格好をしたルクレシス。何の冗談か。 「これは何だ?」  すっと上がった皇の指が鏡に写っているルクレシスの胸飾りを乱暴にはじいた。 「っっ!」  ルクレシスは鋭利なもので挟まれている乳首を弾かれて、鋭い痛みに息が詰まる。  しかし、後ろから腰に腕を回され、もう一方の手で顎が掴まれ、鏡から目をそらすことを禁じられる。 「我は質問しているのだがな…」  もう片方の胸飾りがきゅーっと引っ張られる。 「ひ、ぁー、あぁ…ひっ…」  引っ張られる痛みから少しでも逃れようと前のめりになるが、顎をつかまれているので、差し出すように突き出してしまう。  揃いの飾りをつけられた陰茎も胸に刺激を与えられる度に、ビクビクと立ち上がり、忙しくなく鈴の音をさせる。 「答えぬとはいい度胸だ。先からこちらが騒がしいな…説明してみよ。」  皇は胸の飾りを引っ張ったり、潰したり、弾いたりしながら、ルクレシスに言葉を強いる。 「…ふ…はっ…あ、……せ、性器、が、勃って…おり、ます。」 「それは見れば分かる。騒がしい理由を問うてるのだが。」  やっと絶え絶えにも答えたが容赦ない。 「…ふ、ぅ…、乳首が…」 「悦いのか?…腰が揺れているぞ。」  一気に飾りが引っ張られて、限界まで乳頭が伸ばされて、そのまま留め具が弾ける。 「ひっ痛っ!」 「痛いのに感じるのか?顔のわりに淫乱のようだな。」  強烈な刺激に陰茎がふるふると揺れて、先から粘液を垂らす。己の意に添わぬ己の身体に裏切りを感じる。  皇はルクレシスの絶望を無視して、もう一方の飾りもじわじわと引っ張って行く。真っ赤になった乳首が伸びきって今にも弾けそうだ。  先ほどの乱暴に留め具を外された記憶のせいで、この先を想像するだけで膝が震える。 「い、いぁ…痛ぃ…ひ…」  無慈悲にもじりじりと引っ張られる。そして、又、乳首を食んでいた留め具が限界を超えて弾けた。  鈴の音とともに悲鳴が響く。ルクレシスはじんじんと痛む両胸を押さえて床に崩れ落ちる。しかし、床に腰の落ちた反動で体内のものが突き刺さり、さらに床で身悶えることになった。 「余興はここまでだ。」  皇に腕を取られ、そのまま寝台に乱暴に突き倒される。そして命じられる。 「役目を果たせ。」  ルクレシスは姿勢を正そうとするが、まだ腹の中が落ち着かず、のろのろとした動作にしかならない。それでも、口上をたどたどしく述べて、いつものように夜着に手を伸ばす。  いつものように、と思える程慣れたのかもしれない。安座になった皇の腰に顔を埋めて、舌を伸ばした。 「腰を上げろ」  奉仕をしながら、腰を上げさせられる。頭は低く下げているせいで、尻を突き出しているような格好だ。体内に埋め込まれた張型の根元には飾り輪が付いており、それが突き出ている状態になる。  皇がその輪を引っ張ると、蕾が張型のかえしに引っかかってめくれてくる。内臓が引き摺り出されるような感覚だ。 「…ふぐっ…うぅ…」  陽根を咥えたままくぐもった声が漏れてしまう。張型の先端に施された雁首の傘が腸壁を無遠慮に抉ってくる。必死で耐える。  途端に喉奥を突き上げられた。 「さぼるな」  ぐぼっとえづいて、喉が反射的にきゅうと皇の先端を締め上げる。  気道を塞がれて吐きそうな位に苦しいが、そこは訓練の成果なのか、歯を立ててしまうという失態を犯さずにすんだ。    皇は張型を傘の部分まで引き抜くとまた根元まで挿入することを繰り返してくる。ルクレシスの上の口の奉仕がなおざりになると容赦なく喉奥を突き上げ、下の口に張型の括れをひっかけてはその反応で遊ばれる。  執拗に与えられる刺激は腰に熱を溜めていく。これまではそこを弄られても痛み、不快感ばかりだったのが、淫らな熱に変わっていく。  一層の力がかけて張型が引っ張られ、そのままずるんと最後まで抜かれた。  その衝撃でのけぞって叫び声をあげてしまった。 「あっ、ふぅ…あ…」  陰茎は大きく膨らんで、トロッとした粘液を零してしまっていた。  許しもないのに口から皇の陽根をこぼしてしまった。急速に頭が冷える。寝台を慌てて降りて、石の床に額を付けて伏す。 「…申し訳ございません…」 「まぁ、良い。脚を開け」  皇からすると、大して身の入らない口淫では高まりきらず飽きたのと、その分後孔で奉仕させればいいだけなので不問に付しただけだ。入念に準備されたそこならば、夜伽の技量としては半人前でも、皇の陽物を慰める穴としてなら、役目を果たせるだろうと。  黒曜石の瞳が獲物を捕らえたように細められている。まだ機嫌を損ねていない。ルクレシスに出来るのは、自分のためにご機嫌麗しくいて頂くために従順に振る舞うことだけだ。  寝台の上に登って、閨房作法の時間に習った通りに仰向けに寝て、脚を開いて見せる。ルクレシスの蕾は咥えるものをなくして、緩く開いたままになっている。  皇がルクレシスの身体の上にのしかかってきて、強直を押し当ててきた。開いていた蕾が先端部分を誘いこみ始める。しかし、張型より一回りは違う質量に、引き攣れてくる。水の神官による馴らしなど児戯に等しかったのだと思う。また裂けるのではという恐怖が足元から這い上ってくる。四肢が強張り、息が浅くなる。張型が抜ける時には密を垂らしていた陰茎も萎えてしまっている。  宦官の手で馴らされても、ルクレシスにとっては初夜は相当のトラウマになってしまっていた。  来るべき衝撃に耐えるために知らず知らずのうちに噛みしめていた唇にやや温度の低いものが押し付けられて、驚いて目を開けると皇の顔がすぐ近くにあった。再び唇に感じる感触で口づけをされているのだと知った。  驚いてルクレシスの意識が後孔から逸れるとゆっくりと身体が進められる。やわやわと髪も撫ぜられている。まるで大切にされているようだ。 「口を開け。」  頬を軽くたたかれて、ゆるゆると口を開けた。開いた唇に熱い舌がねじまれる。逃げようとする絡めとられる。唾液がくちゅくちゅと水音をさせる。  口づけが深まるごとに陽根が体内に侵入してくる。やがて腰がぶつかって、全てが挿入されたことが分かった。裂けることなく根本まで受け入れることが出来てほっとするが、苦しいものは苦しい。内臓がいっぱいにされて腹が苦しい。下から肺が押しつぶされてか、短い息しかつけない。  はっはっと浅い息をするために開かれた唇に皇からの唾液を流し込まれて、溺れそうだ。必死で飲み下すが、口の端からこぼれていく。  少し身体を引いて、そこから穿たれると息とともに嬌声をあげてしまう。思わず体内のものを締め付けてしまい、その大きさにまた耳をふさぎたくなるような嬌声を上げてしまう。 「ふっ、あっ、ぁっ」  最奥を突かれるたびに肺から空気が押し出されて、鼻にかかった声が漏れてしまう。皇の手が頭を固定しているので、ずりあがって逃げることは出来ない。注挿のスピードはどんどん早く、激しくなっていく。  大切にされているのか粗雑に扱われているのか分からない。  体内のものが更に質量を増して、身体がバラバラになりそうだと思った瞬間、熱い飛沫が流し込まれる。 「あ、っつ…あ、ふっ」  どくっどくっと流し込まれるものは、香油の比にならないほど熱く、苦しくなるほどの量だった。  脈動が落ち着くと皇のものが引き抜かれる。一度で終わる務めでないことは知っている。しかし、ぐったりと四肢が重く、身体が動かない。  皇はそんなルクレシスの身体を軽々と引き起こして、今度は自分の安座の上に乗せる。上体を抱えながら、一度放っても硬度を保ったままの陽根の上に、再び腰を落とさせる。  下から串刺しにされる苦しさも知っている。出来るだけ自重を分散させないととルクレシスは萎えた足を叱咤するが、踏ん張ることは出来ない。中に出された粘液の滑りも手伝って、下からの突き立てられた剣をずぶずぶと飲み込むしかない。時折、開いた後孔に入った空気と粘液がぶちゅ、ぶちゅっと卑猥な音を響かせる。休む間なく咥えさせられるルクレシスの口からは弱々しい声が漏れるのみである。 「ふ、かぁ、いっ、あ゛っぁ゛ぁっ…」  皇の手によって腰を持ち上げられては腰の上に落とされると、自重で常よりも深くまで突き刺さって、苦しさにうめく。 「こちらを見ろ。お前を犯しているの誰かを。」  向き合った皇の黒い瞳を直視できなくて、目を逸らすと、胸を摘まみあげられて啼かされる。求められるままに口づけも繰り返していたが、どこからかルクレシスの記憶は再び飛んでしまっている。  ラーグは完全に力をなくした裸体の中に精を放つと、幾度目かからはどんなに刺激を与えても反応をなくしてしまって初めて身体を離した。程よい疲労感でまぁこれで良いかと思ったところで、完全に閉じてしまったまぶたに軽く口づけを落として、抱き込んで横になる。  伽役の迎えを要らぬと去らせて、そういえば今回は三度目の召命だったことに気がつく。あの格好は三度目ということで宦官達が腕によりをかけたのかと思い至る。随分とな神官が付いているようだ。  三度召したら宮を下賜するという慣例だ。濃紺(ランスルー)の瞳にちなんで瑠璃宮を下賜しようとは考えていたが、その他のことなど考えていなかった。  侍従を呼んで、何着かの正装や宝石もあつらえることや勅書の用意を命じる。後はまた暇をみて考えようと腕の中ですうすうと寝息を立てている身体を抱き直して眠りに落ちる。  なぜこんな貧相な子どもを召し上げることにしたのか、別に確たる理由などない。  これが何処まで足掻くのか、見てやろう、飽きるまでは。 (飽きさせるなよ)  簡単に壊さないように気をつけてやったのだ。その血にどう抗うのか、楽しませてもらおう。
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