5-4.生 ※※

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 ず、ず、と一物が再び埋め込まれる。皇が中に放った恩寵のせいで簡単に入ってくる。  ただ大きさはルクレシスの体格に見合わない物であるのは変わらないので、内臓が押し上げられて苦しい。 「くっ、ふっ…」  肺も押し潰された声が出る。 (どうせ意識が無くとも好きにするのだから、好きにすればいい…)  先程まで乱暴に体内を敏感な場所ばかりを責められて、叫び疲れたルクレシスは再び侵入してくる熱を半ば自棄になりながら受け入れる。  恩寵を一度受けただけで身体はもうバラバラになってしまったかのようなのに、それが幾度となく繰り返されるのだ。身体はただ転がって居るだけになってしまう。  それ以上に強い刺激にさらされ続けて頭が、思考が千々になっていた。  皇の仕打ちはルクレシスの身体も精神も疲弊させる。  祖国では部屋に軟禁されて、数ヶ月放置されることもざらにあった。何もない場所で一ヶ月経ったのかどうかも判然としない生活は、何も色も刺激も無くて楽だった。自分の存在が空気に溶け込むような、そのままふっと消えてしまえば楽なのにとも感じていたように思う。  母は事情が許せば月に一度か、時間が空くと数ヶ月に一度訪れてくれた。大抵ルクレシスに手土産を持ってきてくれる。ルクレシスの私物は母から贈られた小物で、それはいつも大切な宝物になった。そして、母は必ずルクレシスを前にして泣く。母の苦しみの元凶である自分には慰める術もなく、ルクレシスはただただ無力だった。  ジシスは時折やって来てルクレシスをいたぶる。暴力はただじっと耐えていれば過ぎ去っていくものだ。ただの痛みは自然と消えていく。しかし、母の涙は心を抉る。思い出すだけでも、心から血が滲み出す。  (これ)もただ耐えて居れば終わる筈なのに、皇はルクレシスの身体を蹂躙するだけでは満足しないのだ。 「こっちを見ろ」  いつの間にか思考の波に呑まれていたルクレシスの顎が皇に強く掴まれ、目を合わせられる。無理矢理、現実に引き戻された。  皇の黒曜の瞳は不快に彩られている。その視線に射抜かれて、ルクレシスの背筋がゾッと粟立った。自分はまるでピン留めされた標本の蛙のようだった。  皇の手が首にあてがわれ、威圧と共にぎりぎりと力が込められる。 「何を惚けている。お前は我の所有物だ。この体もその頭の中も我のものだ。」  首にかけられる力は強さを増す。  皇の怒気に当てられて息をすることを忘れていた。身体が苦しさを覚えて酸素を吸おうとしても、一筋の空気も通らぬ程、強く気道を押されている。  痛みと苦しさで目の前がチカチカし始める。苦しさで皇の手から逃れようと足掻くが、ルクレシスの力では元より敵うはずもない。  目の前がかすみ始めて、意識を失うというところで手が離された。  ルクレシスの体が本能的に酸素を求めて大きくあえぐ。そのまま喉が裂けそうな程激しく咳き込む。涙も唾液も鼻水も滂沱に溢れてくる。身体からもどっと冷や汗が出て、ぐしゃぐしゃの状態だ。  整わない息の中、皇の怒気に恐怖を感じながら皇を伺うと、皇は嗤った。夢想は終わったか、と。 「次は優しくしてやろう。」  皇がその手で締め付けていた首筋を労るように唇を寄せて、そう言う。  そして、恐怖に引き攣ったままのルクレシスの身体を組み敷き、じっくりと侵していく。これまでになくゆっくりと。  耳に首筋に乳首を緩急をつけて食まれる。口には皇の指が入れられ、舌や口蓋を擦られる。もう一方の手はルクレシスの陰茎を抽挿に合わせて扱き、時々鈴口を弄る。  全身の性感帯を同時にもどかしいほどの刺激を与えられて、閉じることの出来ない口からひっきりなしの啼き声が上がる。咳き込み過ぎたせいで、その声は割れていた。  大きすぎる快楽のせいでルクレシスの陰茎はだらだらと精液を零すことになり、零すごとに体力がどんどん奪われていった。  皇を満足させられたのかどうか分からないまま翻弄され、ルクレシスの意識は皇によってブラックアウトさせられた。
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