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10-2.永の夜 ※
いよいよ天中節も夏至を迎える。
その日、ルクレシスは第一正装を着付けられ、早々に神殿入った。
神殿内は多くの神官が行き来するものの一切口を開く者は居らず、硬い静寂と緊張感が張り詰めていた。外の祭の喧噪とは隔絶されている。
ルクレシスもうまく出来るか緊張気味で、頭の中で手順を反復していく。一年で最も大切な祭祀で間違えがないようにしなければならない。
神官長の長い祝詞で儀式が始まる。ゆうに四半日はある儀式の式次第を思うと気が遠くなるが、目の前の進行を一つずつ追っていく。予行の後に黒曜の宮が一つ一つの謂れと流れを書き出してくれた。それを思い出しながら見ていくと、所作に込められた意味が見えてきて、集中することが出来る。
祭壇の前に設えられた供物台には皇国各地からの捧げ物が溢れんばかりに載せられている。宮達四人で招来の儀を執り行ない、南中と共に皇が祭壇に現れる。太陽を頭上に戴く皇は燦然と輝いている。強い真夏の日差しで目を焼かれて皇を直視出来ない。漆黒の髪は艶やかに光を反射している。その圧倒的な存在感に決められた所作だとかは関係なく、自然と頭を上げられなくなる。
太陽の祝福を皇から宮へ聖別した松明として下賜し、宮から各地の神殿の者達へと与えていく。その間中、陽の神官達の舞は一切乱れることも途切れることもなく続く。
この儀式が終わるとここで受けた祝福を神官長は各々の神殿に持ち帰り、聖別された火として祀る。神殿は広大な皇国の中のどんな僻地であっても設けられており、松明の火は皇の支配と守護を全土に知らしめる。
宮に戻って第一正装を解かれてやっと一息つける。長い時間直に陽に照らされていた肌は、日除けの粉をはたいていても真っ赤になり、ピリピリと痛む。
側仕え達が冷やした布で火照った肌の熱を取ってくれる。傷んだ肌を修復させる働きのあるという薬草をすり潰した泥状のものを更に塗って、肌を労わってくれる。
ひんやりとして気持ちがいい。
しかし一息つけたのも束の間で、皇からの召命が届いた。夏至の喜びにさらに皇からの召命の誉れで宮中が活気づく。
正直、儀式だけで体がしんどいと感じていたルクレシスはぐったりとした。侍従長が丁寧にこの日に選ばれることの栄誉について説明してくれるが、これから水の神官に準備され、皇の元に訪うにはかなりの気合いが必要だ。
疲れの濃い主を見かねた侍従長が苦味と香りのきつい滋養強壮の薬湯を用意してくれた。苦行が増えた。
「あ、ぅっ」
何度されても慣れない。少年宦官が香油の瓶の口を後孔に突き立てて、中身を体内に注ぎ込んでくる。丁度人肌に温められているそれは、冷たくも熱くもなく、妙な感覚でとろりと内臓を流れていく。その感覚に背筋から脳髄までうずきが走る。
その上、瓶の中を空にするためにか、ぐにぐにと入口で瓶が動かされる。
「っく、っは、はぁ」
注ぎ終わると、今度は指が添えらえれて、瓶の口と入れ替わりで侵入してくる。解すことが目的で前立腺を刺激しないように行われるために、焦ったい感覚が強い。
指が三本飲み込めるようになった所で、想定していなかった硬い塊が挿入された。
「な!何を」
うつ伏せで敷布に顔を埋めて耐えていたルクレシスは体内に納められた異物に驚いて半身を起こす。
「飾りを入れさせて頂きますから、ゆっくりなさっていて下さいませ。」
ルクレシスは振り返って後悔した。宦官の手には幾つも丸い石が連ねられている物が握られていた。石は琥珀や水晶などの玉である。あの大きさなら一つ一つが100万冠下らないのではないか。
つぷん、つぷんと宦官は次々に玉を後孔にはませていく。先に入った石が押されて奥へ奥へと入っていく。幾つ入れられたのか腹が苦しくなってきて、浅くしか息が出来ない。
「苦、し、ぃ…もう…」
「後、一つですから」
申し訳そうな声色ながら、容赦する気が一切ないらしい少年が苦しさからか石を受け入れづらくなってきたそこに力をかけて最後の一つを押し込んできた。
最後の石には房が垂れており、蕾から房が生えているかのようになっていた。
仰向けになって欲しいと少年神官から言われるが動くのが怖い位に下腹部が苦しい。
「む、り、、苦し、い。気持ち悪ぃ…」
それでも神官達によって仰向けにさせられる。ほんの少しでも動くと直腸内の玉が動いて、異物感に顔が歪んでしまう。額にも汗が浮かんでくる。
水の神官が仕込んだ物は、主の体格の小ささに合わせて、玉の大きさも数も控えめに特別に誂えたものだ。結腸を超えてしまわない数になっている。そこを超えてしまうと、今の主の身体の開き具合だと、体調を崩してしまう恐れがあるからだ。
ルクレシスにとっては充分苦しく、蕾を解されていた時には反応していた陰茎は萎縮してしまっていた。水の神官が手早く陰茎に手淫を施す。
最近、反応しやすくなったそこは後孔の苦しさにも関わらず、また立ち上がってしまうのも遣る瀬無い。中心に直接与えられる快楽に腰が揺れてしまうと、体内の玉も動く。不意に腸壁の一点を蠢いた玉が掠めて、「ひっ」と跳ねてしまう。
余計に締め付けてしまい、また悶えるという悪循環だ。
一人苦しむルクレシスの中心はくっきりと勃ちあがったが、神官が根元に細く滑した皮で締めつけた。
吐精を抑制するためのものだった。皇は寛大にも赦して下さったが、先の伽で粗相をしてしまったルクレシスが再び粗相をしないように、というためだ。
水の神官から「皇のお許しを得て解いて下さいまし」とくれぐれも注意された。
夏至の陽が落ちて、夜の帳が降りるとルクレシスは扉前まで側仕えに抱き上げられて運ばれた。腹の中が苦しくて一歩も歩けなかったからだ。
部屋の前で降ろされ、何とか一礼の後、皇の閨房に入ったが、拝跪すると腹が押されてさらに苦しい。ごりごりと体内で石同士がこすれ合い、内壁が不躾に刺激されている。
「すでに息が上がっているな…」
跪いているルクレシスはそのまま立ち上がるのが困難なほど下肢に力が入らない。力を入れると後孔が中のものを余計に締め付けて、内側からえぐられてしまう。
「また凝った趣向を施されたのか。辛そうだな。」
皇が嗤う。何をされた、と問われる。
「…玉を仕込んでございます…」
見せろ、と命ぜられて、ルクレシスは思い通りにならない身体をのろのろと動かした。皇の酒の定位置である寝椅子の前で四つん這いで腰を上げる。
恥ずかしさと抵抗感があっても、皇に身体を捧げたルクレシスには拒否することは出来ない。
床に伏してルクレシスは薄衣の裾を自分で捲る。覚悟とは裏腹に羞恥で手が震えた。
「中途半端にするな、腰を上げろ。」
皇の言葉に、あられもなく蕾を晒すことになる。そこからは絹糸の房が垂れている。
皇が房に手をかけるのが、気配で分かる。そのまま力をかかり、ちょっとした抵抗の後にずるんと玉がこぼれ落ちる。
「っひ、ぁーあっ!!」
有り得ない感触にルクレシスの背がしなって高い声が上がってしまう。更に力をかけられて、玉が蕾を内側から捲りあげて、勢いよく飛び出す。
「っひ、は…ぁ、ぁ、やぁ…」
皇が房を引くと次は二個三個と連なって排出された。中を擦られて、敏感な入り口を暴力的に刺激されるのに、悲鳴を上げるしかない。
玉を吐き出した後孔が痙攣しているかのようにわななく。
ルクレシスの脚ががくがくと震えて、そのまま床に崩れ落ちる。
「もう足腰立たぬか。」
皇が寝椅子から立ち上がり、ルクレシスを抱き上げて、そのまま寝台に放った。 天中節を終えて気が立っている肉食獣のところにお膳立てされた羊が差し出されたようなものだ。
「明日のことを考える必要もない、最後まで付き合えよ。」
獰猛に嗤う皇にルクレシスはただただ怯えるしかない。
夏至の夜は短いはずなのに、今宵の夜伽役にとっては永い夜となりそうである。
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