4-3.飴と鞭 ※

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 少年宦官に教えられた作法を必死で思い出す。 「んっぅっ」  もう一方の空いた手で、よく少年宦官にされたように乳首を擦った。びりっとした刺激が下腹部に走る。  胸の飾りを引っ張ったりすり潰したりすると快楽に喜んだ後孔の内壁が大きくうねる。奥まで指を誘い込んでもっともっと大きな快楽を期待するかのように、自分の身体なのに別の生き物のように勝手に蠢きはじめた。  身体は快感にはすぐに心を裏切って反応を始める。そのことを皇国に来て嫌という程に教え込まれた。  心を閉じたら身体も一切感じなければいいのに、心を置いてけぼりにして快楽に身体は陥落する。  しかし全く心を伴わない快楽はただの反応で、皇を満足させることはない。ルクレシスの心なんて無視して、身体だけ好きに抱いてくれたらもっと楽になるのに。  今も皇は侍従に注がれた酒を煽りながら、ルクレシスを冷たい目で見ている。手は退屈そうにマドラーを回している。 (飽きられる…)   胸を弄りながら二本に増やした指を抜き差しして、必死で自慰をしてみせる。もどかしい熱は生まれてきても、一気に高みに突き上げられるような刺激にはならない。中途半端で辛い。  この醜態を終わらせられないことも辛いし、皇に冷めた目で見られているだけなのも辛い。正気を失えないことも辛い。熱を発散できないことも辛い。 「ふっくっ…う」 (…欲し…ぃ)  脳髄まで焼き切ってくれる皇の剛直が。  本当に自分は男に抱かれないと収まらない淫乱な身体になったことに心は絶望しながらも、身体の欲求を満たしたくて、思考が冒されて何もかもどうでもよくなる。 「どうした?手伝って欲しいのか?」  ルクレシスの心を見透かしたように嗤いながら皇が言う。  皇からの温情に思わずこくこくとルクレシスは首肯してしまう。 「得意の道具を使えば、上手いこと出来るだろう。」  しかしルクレシスの願っていたことは無視されて、皇は神官に性具を持って来させる。様々な性具が整然と並べられた盆を差し出されて、一気に血の気が引いた。 「好きな物を使えばいい。」  固まるルクレシスに追い打ちをかける皇の声がかかり、未だこの見世物を取りやめにしてもらえるわけではないことが分かる。これまでルクレシスの出来が悪いと早々に止めになることもあったが、今回は「もういい」とはならないようだ。  何としても盆の上から選んで痴態を見せねばならない。盆の上にはシンプルな張型から使い方の分からぬような類のものもある。  戸惑うルクレシスに青年神官が張型全体にごつごつとした突起の出たものを扱いやすいからと勧めてくる。 「これならばどこを当てても気持ちよくなれますよ」  見るだに恐ろしげなそれには恐怖で喉が引きつる。それよりもましだと、ごくごくシンプルな細長い先端が丸く処理されている棒を何とか選んだ。  例によって香油はもらえず、性具も口に含んで体内に埋める部分に唾液を絡める。細長いそれは喉奥に突き当たって苦しいが、滑潤液なしでは怖い。  濡らしたそれを皇の視線に追い立てられながら、体内に挿入させていく。太くもなく細工もないそれは思いの外すっと入っていくが、指とは違う無機質の硬い感触が怖くて、気持ちが萎えそうになる。 「くふっ…う」  それでも息を逃して体内に埋め込む。  こんなことがスムーズに出来るようになった点ではかなり手慣れたのだと思う。張型を動かして自分の奥の性感帯を懸命に探る。シンプルなくびれも何もないただの棒で細いため、蕾部分もそれほど刺激されずにもどかしい感覚だけである。神官の勧める張型の方が一気に様々なところが激しく刺激されて早い事達せられたのかもしれない。 「ひ、あ、ぁー」  がむしゃらに弄っていた棒の先端が奥を突いた瞬間に、あられもない声が上がった。硬質の棒によってピンポイントで与えられる急激な刺激に目の前がちかちかする。強すぎる刺激にやめたいけどやめたくない、やめてはいけない、だけど辛いと、頭の中がごっちゃになる。  でも、これで達することが出来る。必死に手を動かして、皇の肴に痴態を披露する。 「あ、はー、あっ!いぁー!!」  意識が快楽に支配されて後はもう達するというところで、全身の血が逆流するような焼けるような痛みが与えられた。 「いたっ、あ、ゃーあ!」  今にも精を放ちそうになっていた鈴口に金属の棒が突き刺された。皇が手に持っていたマドラーを突き刺したのだ。不意の激痛にのたうってしまう。  側に控えていた青年神官が慌ててルクレシスの体を抑えにかかる。暴れて尿道に突き刺さった棒で怪我をされても困るし、何より反射的に皇を突き飛ばしたり蹴り飛ばしたら不敬となり大変なことになるからだ。 「出さずにいけ。出来るだろう。」  皇がまだ達していないため最もなことだが、このタイミングで無理矢理尿道に突き立てられた苦痛はいかばかりか、皇も殺生なと青年神官は腕の中で震える夜伽の細い身体をあやしながら苦笑していた。  ルクレシスは何とか息を落ち着かせたところで、神官に支えられながら、性具を操って精液は放てずに辛い絶頂を迎えた。  痙攣を繰り返した後の弛緩した身体から、ぼとりと性具が落ちた。  無機質な道具によって迎えた絶頂は無遠慮で冷たい絶頂で虚脱感だけが漂う。朦朧となった意識に何が何だか分からずに流した涙で顔もぼろぼろになっていた。 「よくやったな。」  皇の存外にも優しい声で労われて、緊張の糸が切れたルクレシスは嗚咽をあげてしまう。 「褒美をやろう。」  責め苦の辛さに泣きだしたルクレシスを皇が引き寄せて、その腕の中に抱きとめてくれる。やっと感じる人の熱に緊張が緩んで、余計に嗚咽が止まらなくなってしまう。まるで幼い子どもの頃に戻ってしまったかのようだ。 「少し我慢しろ。」  その言葉とともに無慈悲に突き立てたられたままになっていたマドラーを引き抜かれた。引き抜かれるのも痛くて、また涙がこぼれる。 「次は気持ちよくだけさせてやる。」  皇が何度も頭を撫ぜてくれる。大きな手に包まれているだけで安堵が広がった。  ルクレシスの嗚咽が落ち着くと、軽く頭を下に押されて、口淫へと導かれた。皇の屹立が立ち上がっていて、未だルクレシスに飽きたわけではないらしい。素直に口をあけて皇の中心を咥えた。舌で舐め上げると硬度を増していく。  皇の中心が十分に立ち上がると口から離され、敷布に倒された。そのまま、後孔に陽根がぴたりと押し当てられて、じりじりと埋め込まれていく。  散々嬲った蕾はさして抵抗することもなく飲み込んでいく。むしろ、欲しい思っていた熱に全身が歓喜する。  挿れられただけで断続的に陰茎はだらだらと白濁液をこぼしてしまうが、咎められることはなく、ひたすら快楽を感じるところを擦られる。  皇の言葉通り、快楽だけを与えられ続けた。上げすぎた嬌声で声は枯れ、下腹部の精液は枯れて、快楽が過ぎた苦痛になるほどに抱かれた。
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