7-2.杭打つ ※※

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7-2.杭打つ ※※

 ラーグは日がな一日馬車に押し込められて固まっていた体を寝台の上で側仕えに解させていた。  呼び出した夜伽役の顔色は青白い。出立の儀からして色を喪った顔をしていた。寝台の下の床で拝跪して待つ姿は伽に侍る姿は、風が吹けば飛びそうなほどに儚い。杭を打って、自分の下に縫い留めておかねば。 「上がれ」  一頻り側仕えに体を解させた皇が体をなじませるように肩を回しながら、瑠璃の宮に命じる。宮は一礼をしてから従順に作法通りに褥に上がってきた。  伽が褥に上がると同時に閨番達が部屋の火を落とし、寝台を囲う帳を下ろすのが習いだが、手でそれを制す。  寝台の上は燭台の灯りで照らされている。  常とは違うことに狼狽る伽役に、続けろと顎で示した。  小さい身体を一層小さくしながら、伽役は夜着を肩から滑り落として、皇の前に真白き身体を晒した。  ラーグは指で首から肩、腹へと撫で下ろしていく。明るい中で肉より骨が一層目立つ。 「顔色は最悪だが、肉は落ちていないな。まぁよかろう。」   「…ご奉仕、させて下さいませ。」  伽役はラーグの目を避けるように顔を伏せて、皇の下肢に蹲った。  宿の最上級の部屋にぴちゃぴちゃと唾液の音が響く。  ラーグは伽の頭を掴んで、髪に指をなじませる。丁寧に櫛削られて柔い髪はラーグの指にすぐに馴染み、お気に入りだ。上から下へと撫でおろして、その感触を楽しむ。舌技の下手さを補うために、頭を押さえ込むと喉奥に切っ先が当たった。喉輪がきゅうきゅうとラーグを締め付けてくる。身体が小さい分、首の造りも小さく、技巧がなくともそこそこ気持ちが良い。 「んぐっ!んんーっふ」  顔を反射的にあげようとするのを制すると、溺れたようで苦しそうな声が上がる。 (こういう所がなかなか上手くならんな…)  黒曜だと最奧まで使っても涼しげな顔で息を荒げることなく、皇のものを高めて、精を絞りとっていく。  瑠璃の宮も水の神官の躾が実を結んだのか、苦しみながらも吐き出すことなく、必死で舌を絡ませてくる。前髪を撫で上げ顔を上げさせると、眦を涙で汚している。濃紺の瞳が揺れて、苦しげに寄せられた眉に、皇のものを咥えて戦慄く唇に、これはこれで可愛げがあって良いかと嗤う。 「真面目にやらぬと終わらぬぞ」  腰を動かして喉奥をついてやると、くぐもった声をあげる。何とか喉を開いて雄芯を咥えこむことがかなうと、茎のところに舌を絡めて、吸い上げてくる。深く咥え込んでの愛撫、引き抜いて鈴口を小さな舌でチロチロと刺激してくる。次第に咥えながら酸欠なのか陶然とした、とろんとした目になる。  ラーグは額から蟀谷、耳へと手を滑らせる。どこもラーグより小さい。白蝶貝を切り抜いて細工したような白い耳を撫ぜ、耳穴を指で擽ると、くぐもった嬌声が上がった。執拗に耳を指で犯しながら、喉奥に精を放った。  詰まらない型通りの口上など聞くも無駄だ。作法通りに拝伏しようとする身体を敷布に転がした。一度では全く満足しないそれを、腰を掴んで後孔に一気に突き立てた。 「くっん、あーぁ、あああっ!」  暫く抱いていなかったからか、後孔がラーグの質量に驚いたように蠢く。  嬌声というより叫びに近い声を上げて、全身を強張らせた。 「どうした?もう主人を忘れたか?」  初心で緊張した反応を返してくるのを揶揄しても余裕がないようで反応は返ってこない。必死で息を吐いて衝撃を逃そうとしているようで、は、は、と短い息をついている。 「やぁーっ!あ!…う」  斟酌せずに一気に引き抜いてから強く突き上げた。  どうやら辛いらしく、ボロボロと涙が溢れている。涙が溢れているのにも気がつかないかのようで、呆然と目を見開いたままで、のけぞった首元が律動に合わせてがくがくと晒されている。  少し噛み付けば喰い破れそうな無防備な喉元を優しく舌で撫で上げる。 「美味いな」  そのまま歯を立ててしまいたいが、今壊すために呼んだわけではない。身の内の獰猛な熱を飼い馴らして、所有痕を残すにとどめる。  体内を犯す陽根は容赦しない。肌のぶつかる音が高く響く程に突き入れ、鎖骨から首筋、頤、耳朶は柔く吸うと、混乱したように高い声で啼き始める。 「ひ、あぁ、き、つぃ…や、くる、ぁあー!」  初心な反応の中に散々に慣らされた快楽も交じり始めて、頭をおかしくする強烈な刺激に(かぶり)をふって逃れようとしている。そんなことで快楽が散るわけでもないのに、伽役は無意味な行為を続けていた。 「そろそろか」  ラーグが正体不明になっているルクレシスの体をきつく抱え、両の腕を褥に固定した。一層激しく突き上げながら、反応悦い処ばかりを責め立てる。 「今一度問う。お前の命は誰のものか?」  耳朶を甘噛みしながら問う。こんな睦言をラーグが閨で言ったことはない。そして、答えは一つしか赦してはいない。  香油の噎せ返るような香りと淫靡な水音、喘ぎの中で伽役は必死に応えようとする。   「…んっあ、あ、お、皇の、もので、っ…ござい、ます…」  全身への愛撫で血色の良くなった赤い唇が息を乱しながら答える。 「いい答えだ。」  白金の髪を褒めるために撫ぜた。答えを違えなかったことに安心したらしく、ほっと力が抜けた。 「動くなよ。…刺せ」  ラーグは水の神官に命じる。  ぶつり、という肉が穿たれる音と共に、組み敷く四肢がラーグの下で全身の力でのたうつ。 「ひぎ、ぃーー、****」  上がる悲鳴と香油に交じる血の匂い。 「い、ぁ、あ…あー、ぁ!」  ぎりぎりまで追い上げられていた伽役は後孔で皇のものを締め上げて、陰茎からは白濁を散らした。  見開かれた濃紺(ランスルー)は茫然とし、自身に何が起こったのか理解していない。  水の神官の手で穿孔された耳朶の穴に耳飾りが嵌め込まれる。それはラーグが用意させた金剛石の耳飾りだ。  宝物庫に寝かせていた透明度が高く、質の良い金剛石に台座をつけさせたのが誓約させた後。急がせたが、金細工士の腕も良かったらしく、金剛石の輝きを損なわない意匠となっている。濃紺(ランスルー)とかち合うことなく、強い輝きを湛えて濃紺(ランスルー)とあって存在感を失うこともない。  急ぎ用意させた割に良い出来で、ラーグは満足する。 「誓約の石だ。ゆめゆめ自分の言葉を忘れるな。」
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