3-1.召命 ※

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「…申し訳ございません…」  伽役が敷布に額を擦り付けて平伏する。皇を怒らせたのではないかと、怯えて様子を伺う様はまあまあ面白い。必死に足掻くならもう少し遊んでやってもよい。  ラーグは鷹揚に許してやる。 「まぁよい。次で挽回せよ。」  途中で口を離したせいで飛び散った白濁が、生気の薄い顔を垂れ落ちる。生理的な涙で潤んだ濃紺(ランスルー)の瞳と先まで酷使されていたせいで赤くなった唇はラーグの目を愉しませる。伽役の技量としては失格でだが、こういう趣向だと思えば口淫の下手さも一興だ。 「こぼした分もきれいにしろ。」  ラーグは目元に飛んだ体液を指で拭い、口元に持って行く。  賢明にも観念した様子の伽役は舌を伸ばしてチロ、チロ、と控えめに舐める。ラーグは次々と飛んだ飛沫を拭っては口に指を突っ込んでいく。次第に深く突っ込んで行くが、それも必死に舌で舐めとる。ラーグはしばらく指を口に突っ込んだままにして、従順にしゃぶる様を愉しんだ。  ぎこちなさがなかなか抜けないのは、文化的にも、慣れとしても抵抗感があるからだろう。皇国で生まれ育ち、皇に仕えることを誇りとする者は、嬉々として奉仕に勤しむが、禁欲的な倫理観を持つランス国から来て、加えて条約の約束手形として来させられた人質である。こういった行為には嫌悪感があるようだ。それでも絶対的な弱者の立場にあっては従うしかない。 (もっと葛藤して、自分を保つためにあがけ。あがけばあがくだけ、追い込んでやろう。)  長年の均衡を破って皇国を侮ったランス国への嫌がらせのために要求した人質であって、これ自体に何も期待するところはない。死なぬ程度に放置しておいても良かったのだが、あまりの見すぼらしさに興味が引かれた。他国に売られたのに我関せずとばかりに人形のように大人しく幽閉されているのが面白くない。絶望するでもあがくでもない。それでは生かしておく価値がない。生かしておかなくていいのであれば、殺して、好事家の垂涎の的である眼だけくり抜いて、売り飛ばした方が儲かるくらいだ。  人形だけならもっと見目もよく、技量のある男娼がいる。だが、人形を相手にするのは詰まらない。それならば苦しみ悶えるように負荷をかけていくだけだ。しかし、あまり性急に苛めて致命傷を与えてしまっては楽しみが短い。じわじわと追い込んでやろう、と考えて、ラーグの口の端が上がる。  指で幼児のように小さい口内の舌と口蓋を撫ぜながら、もう一方の手で後孔を確かめる。それだけで細い身体がびくりと震えた。  そこは丹念に滑潤油が塗りこまれたようだが、入り口は拒むようにきつく閉じられている。皇の元に寄こされる夜伽役は後孔も成熟しているが、これはあまり慣らされなかったようだ。  ラーグが作法を身に着けさせるように命じたものの、拡張や開発の類は特段命じていなかったせいで最低限しか慣らされていないせいなのだが。  強烈な感覚を与えるために前回のように力づくで身体を開くのも一興だが、あれで瀕死の状態になったのもあり、今回はさすがに手加減してやることにした。  ラーグは寝台脇の瓶を手に取ると、ルクレシスに渡し、それを滑潤油にして自分で後孔を解すように命じた。たじろぐ伽役に追い打ちをかける。 「そのまま慣らさないで良いというなら構わん。我も待つのは面倒だ。」  さっさとしろ、と突き放すと、観念したのかたどたどしい手つきで自分の後ろに手をまわす。  ラーグは乱暴に脚を掴んで、仰向けに転がし、自分に向かって脚を広げさせた。陰部全てを晒すようにだ。  少しでも脚を閉じようとしたら、容赦なく内腿を平手打ちにする。 「ひっ」  打った跡がくっきりと赤く残るほどに肌が白い。以前抱いた時はがさがさとして肌質が良くなかったが、今は世話が行き届いているのか、掌に肌が吸い付く。  内出血が浮かんできても自ら脚を開けないらしい。アピールの激しい者だと腰をくねらせて見せつけてくる位で、そうなると見たい程のものでもない。  無駄に恥ずかしがるから強要されることに気づいていない。 「縛られたいか。」  白い指が後孔に当てられるが、指先すらも入らないようだ。焦りで一層口は固く閉じてしまっている。陰茎も完全に萎えてしまっている。 「あっ…くっ…」  一向に進まない準備にもだえる姿を肴に視姦するのも愉快だが、このままでは夜が明けそうだ。  二回目ではこんなものか。ラーグは寝台脇の侍従に水の神官を呼ばせる。 「手伝ってやれ。」  すっと閨に入ってきた神官に命じると、神官は寝台にあがり、白い身体を背後から自分の膝の上に抱え上げた。  皇に慣らしているところがよく見えるように開脚させて、香油をまぶした指を後孔に当てた。瞬間、身体を緊張させるのを陰茎を巧みに愛撫して、気がそれた隙に緩んだ後孔に第一関節まで埋める。  後孔の入り口部分がクチクチと弄られると啼き始める。 「ひっあぁー」  神官は入り口部分を拡げるように指をぐるっとまわすと、さらに奥に指を進めて行く。 「ぃ…ぁ…ひっ」  拡張しておけとは命じなかったが指一本で悲鳴を上げているのは、躾をしている者達が甘やかしすぎなんだろう。  ラーグ付きの神官は容赦しない。指を根元まで埋め込み、入り口付近まで抜いたり、奥まで差し込んだりを繰り返す。時々、指を曲げて腸壁を引っ掻いているのだろう。神官に抱き上げられている身体が痙攣のように跳ね上がる。 「もう一本くらい食えるだろう。」  ラーグの言葉で神官が二本目の指を入り口に添えて、慎重に、しかし腰が逃げるのを許さずにゆっくりと差し込む。 「っひ、ぁあーーーっ!」  たった二本で苦しいのか、前立腺を引っ掻かれて少し反応を見せていた陰茎が萎縮した。指も埋まらぬようだ。  神官は陰茎をなぶっていた手を今度は乳首にうつして、強く抓りあげた。 「いっ、ぎっ」  悲鳴があがると同時に、神官は二本の指を根元まで一気に突き入れた。  神官は少しなじむのを待ってから、二本をバラバラに動かしたり、穴を拡げるために二本を広げる。二本の指に割られて、強情だった口が開くようなると、ラーグは神官をどかせる。  ラーグはルクレシスの上にのり、入り口に怒張を押し当てる。あまり無茶をするつもりはないが、ずいぶん待った。そのまま香油の滑りに任せて力をかける。 「まだきついな、熱い。」  ぎちぎちという音が聞こえてきそうだ。 「ぎ、っい…ひぃ、っい…」  ラーグはルクレシスの悲鳴は無視して、雁首の張った部分を埋めていく。まだまだ未熟な口は固く、皇を拒絶して奥に進むのをはばもうとしてくるが、かえって陰茎をきゅうきゅうと締め付けて、それも心地よさになる。 「っいた、いっ…ひ、ぐっ」  傍に侍る水の神官があやすように性感帯をいじるが、痛みはまぎれないようだ。四肢をこわばらせ、全身で侵入を拒んでくる。  それでも強引にじりじりと根本まで埋めた。前回は一気に刺し貫いて中が大きく裂けてしまったため、だいぶんと手加減しているのだ。  今度はズルズルと抜いて行くが、腸壁がうねって絡み付いてくる。 「っあ、うっ、んんーーーーっ」  しばらくゆっくりと中の動きを愉しんでから、もう裂けることはないだろうと腰を打ち付け始める。  奥をつくたびに、食いしばった口から悲鳴がもれてくる。内臓を抉られるのから逃れようといているのか、腕を突っ張って抵抗にもならない抵抗をする。   大した力でもないそれを一纏めにして頭上に縫いとめると、ラーグは自分の快楽を追って、御構いなしにグラインドを繰り返す。たっぷりと注がれた滑潤油のせいでルクレシスの身体が拒んでも陽根を根元まで呑み込み、締め付けてしまう。 「拒む割には美味そうに咥えるではないか。」  ラーグはルクレシスの腰を上げさせて結合部を見せつける。嘲りと剛直が己を貫いている様に目の当たりにしてルクレシスは羞恥で涙をこぼす。  襲う側からすれば煽情的でしかない涙目に、上から下へと叩きつけるように腰を打ちつけると、最奥に白濁を吐き出す。流し込まれる感覚に、押さえつけた腕が痙攣するが、それも最後の力だったようである。  そのまま力を失って、抵抗らしい抵抗はなくなる。結合したまま再びラーグが動き始めると、後はいいように揺らされるだけだ。  そのまま二度三度と欲を注ぎ込んでやった。最後には初夜と同じく意識を失って、濃紺(ランスルー)の瞳は閉じられたままになる。  ラーグが力をなくした肢体から、ズルリと己を引き抜くと、意識のないルクレシスの眉根が震え、口から艶やかな吐息が漏れる。己のものと共に吐き出したものが零れ落ちて、白い肌を穢していた。今度は血は混じっていない。  まだ未熟な身体では後孔で悦楽を得る事は出来ないようだが、素質がありそうである。体内から怒張が抜かれる時に、名残惜しそうにきゅうと締め付け、栓をなくした口がひくひくと強ばり、体液の流れ出る感覚に悲鳴しかあげなかった口から鼻にかかったような甘い吐息がもらしながら、昏々と寝続けていた。 (つい遊びすぎたな)  自嘲して、明日やらねばならぬことを考えると諦めて自分も身を横たえる。ルクレシスを回収にきた神官に汚れを拭わせる世話だけをさせ、そのまま白く細い身体を抱えると眠りについた。
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