第19章 空虚を埋める

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猛然と文句を言おうとしたら上から押さえ込まれてキスで口を塞がれた。黙らせようってだけならそこまででやめてくれればいいのに。 服をまだお互い身につけてない状態で肌と肌をぴったり合わせて、身体を無理やり擦りつけてくる。行為の余韻がまだ残る部分に奴のものを押しつけられて、さっき終わったときに装着してた使用済のゴムがいつの間にかしっかり取り外されて処分されてたことに気づく。仕事が早い。 流れで萎えさせるということがこいつの場合極端に少ない。相変わらず手慣れてる、と心の底からうんざりさせられる。 唇を離してぴったり身を寄せたまま熱い息を耳許にかけて囁く。 「まだここ、ぐっしょりだな。火照りも冷めてなくて余韻が残ってる感じ。…まだ満足できてなかった?もの足りないんだね。ごめんね、気づかなくて」 「ちが、…あぁ。もぉ」 指が容赦なく潜り込んできて荒々しく弄る。どこをどうすればわたしがおかしくなるか既に熟知してるこの手。…脚をきつく閉じて締め出したいのに。 我慢できず絆されて、自然と自ら開いていってしまう。こんなの。全然嬉しくなんかない、のに。 奴の声がねっとりと甘くわたしの耳に絡む。 「これで感じてないの?さっきよりだいぶ溢れてきて、シーツまで流れ落ちて染みてるよ。脚もこんなに開いちゃって、もう閉じられないみたいだね。…そうだ、だったら」 ぱっ、と上体をベッドの上に起こしたかと思うと、呼吸を弾ませて腰を悶えさせてるわたしを見下ろしていいこと思いついた、みたいな顔つきで明るく続けた。 「さっきと較べて欲情してないかどうかこの目でしっかり検査してあげるから。ちゃんと見えるように姿勢変えてみてよ。…そう、俯いて四つん這いになって。もっと腰持ち上げて、…惜しいなぁ。それじゃまだ、よく見えないよ」 絶対面白がって遊んでる。と頭ではむかついてるのに、指先で覿面に弱いところを焦らすように揉みしだかれて。ひくひく震えるそこが、欲しくてたまらなくて。…拒絶できないの…。 奴はわたしを調教するみたいに四つん這いにさせたあと後ろに回り、動物の発情状態をチェックするようにそこを間近に遠慮なく覗き込んでる。…のがわかる。 「脚大きく開いて。その状態で腰もっと上げて。…そう。いい子だね、眞珂。これで全部丸ごと、奥まで見えるよ。恥ずかしいあられもない格好、よくできたね。…どう?俺に中までしっかり見られて。嬉しい?」 指を浅く挿れられて、焦らすように入り口を拭われた。その拍子に中からどっと溢れて、腿を熱いものが伝い落ちるのがわかる。 「あっいやぁんっ、みないで…っ」 「嘘つけ。わたしのいやらしいとこ全部見てください、ってここが嬉しそうにひくひく喋ってるぞ。眞珂の口は本当に素直じゃなくて頑固だな。…だけどここの口はいつも正直で。欲しくてたまらない、ってちゃんとはっきり言ってるよ。…ほら」 指をぐい、と思いきり奥まで挿れられた。同時に弱点の突起をくりくり、と親指で捏ねられて、中が切なさできゅんと縮んで奴の指を締めつけて絡みつく。わたしは堪えきれず夢中で腰を回して指を味わった。 「あっはぁんっ、もっとぉ…」 「すげー腰遣い。…眞珂ってあどけない可愛い顔して、結構好き者だよな。えっちなことしたくてたまりません、って身体がいつも疼いてるみたい。…中はここが好きなんだよな。俺もう、お前のこと。奥まで何もかも知ってるから…」 「あぁんそこっ、だめ…ぇ」 内側の弱いとこを指の腹で擦られ、びくびくっ、と軽くいってしまう。 哉多は一回終えたばかりだったから余裕があるらしく、そうやってしばらくの間散々わたしを焦らせて思うさま弄んだ。 焦らされれば焦らされるほど頭が朦朧となって、催眠状態みたいに奴の言いなりになっていく。終いには命令されるがままに仰向けになって両脚を自ら両側に持ち上げて拡げさせられ、自分の口から欲しいものをねだるよう強制させられた。 「さ、楽になりたいんでしょ?正直になって。欲しいもの、眞珂の口から。ちゃんと言ってごらん。…誰の。何が、ここに。欲しいの?」 焦らすように微妙にポイントを外したところを指でつ、となぞられる。頭おかしくなりそう。 目の前にこれ見よがしに見せつけられてわたしは全身をわななかせて身悶え、恥も何もなく要求されるままにあられもなく口走った。 奴の目が満足げに細くなり、笑みが顔じゅうに広がったのがわかった。 「…よくできました。恥ずかしいのに、我慢して頑張ったね。じゃあ、ご褒美。欲しくて切なくてどうしようもなかったんでしょ、これが」 「あぁっいいっ、いいのぉ…っ」 嬉しい。としか思えなくて夢中で腰を回してそれを思う存分味わった。気持ちいい。早くいきたいの。…いかせて…。 何度か姿勢を変えさせられて、散々貪られたあとお互い思いおもいにそれぞれびくびくと身体を痙攣させて行為を終えた。 「…ま、か?」 身も世もないほどぐったり芯まで疲れ果てて、しばらくの間身動きもできなかった。やがてようやく落ち着き少し身体を動かせるようになると、わたしはすぐさま奴に背を向けて拗ねたように身を丸めて拒絶の意思を示した。
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