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このようにして思いがけない形で
太吉っつぁんと再会すれば、
リアルに抱き締められる幸福感に浸るのも束の間、
特殊メイクを慣れた手つきで剥がす作業を見ながら
やはりこの男は只者ではないのだ、と確信を
深めてしまうわけでありんした。
貼る吉兄さんが推理したように、
権現を殺ったのは果たして
仕事人なのか?
その仕事人とは太吉っつぁん含む、ドラァグ屋
なのか、そして権現殺しに直接関わったのは
太吉っつぁんなのか?
心を鬼にしてもどうしても確かめなくては
ならないと、思ったのでありんす。
「‥‥教えて、太吉っつぁん。何を聴いても、
アチキは逃げやしないから。ドラァグ屋と
権現殺しはどんな繋がりがあるの?
アンタって実は〜噂が噂を呼ぶが誰も
その正体を知らないという、例の仕事人なの?
‥それから‥それから‥祝言
挙げたって聞いたんだけど?」
「‥なんだけっこうネタバレしてるんだ〜
いい加減、俺も足を洗わなきゃなんねえはずだな。
ドラァグ屋は察しの通り、仕事人グループの隠れ
蓑だったの。
権現はとんでもねぇ悪党だからなぁ、
今ならお凛ちゃんの亡き父上もコスモ法律事務処に
駆け込めば、あいつから借りた金の利息が
『マジ過払いだー』と認定されて、
けっこうな額返ってくるはずだよ。
それにさっき俺、お凛ちゃんが抱えてた父上の借金
全額、両替屋から店宛てに振り込んだからね。
祝言上げたってのも、ま、市民に溶け込む為の
フェイクってやつで‥‥」
「な、なんですとー?」
「お凛ちゃんはもう自由の身ってことさ。明日から
何して遊ぼうか?」
「‥それより権現を殺したのは‥まさかの‥‥
太吉っつぁんなの?それに返してくれたという
私の借金、盗んできたお金じゃないの?
ねえどういうこと?」
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