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「ここからの話は、信じるも信じないもお凛ちゃん
次第なんだけどさ、ドラァグ屋のメンバー全員
タイムワーパーなんだよー俺も、だから
タイムワーパー。
時空を移動しながら商売やって儲けた金で
人助けして、また違う時代にワープするの。
今回は、権現のせいでこの時代エラい目に合ってる
女子達を助けようという計画を立ちあげ実行した‥。
権現殺し‥?ドラァグ屋は、断じて手は汚さねえよ。
権現は見栄っ張りのケチだから、無茶言って、
宴会場の料理場に当日、
自ら山に入って狩って来たキノコを持ち込んで
茶碗蒸しを作らせたのさ。
その中に松茸とまるで瓜二つ、
紛らわしいこと、この上ない毒キノコ、
ネオワライタケが、混じっていた‥
悪いことはできねえもんだな、当たっちまったのは
自分だったんだから‥。
これまであいつは自分の罪を他人に被せて
地位と金を守ってきたんだ。死に際のセリフまで
権現らしい生き様を物語ってるよ‥。
あの日、全ての物事が偶然にしか見えないように、
それはもう長〜い時間をかけて緻密に計算されて
いた‥そしてドラァグ屋のメンバーは既に
タイムワープしちまった‥
それで、納得できないかな?おり〜んちゃん。
俺は‥俺が‥まだ此処に残っているのは
お凛ちゃんとの約束を守る為。また来るって
言ったろ?」
やはり、太吉っつぁんは白でも黒でもないグレーな男だ。
私だって赤でも白でもないピンクな女だけれど。
「ねえ太吉っつぁん、今から自由だと言われても、
私には行く所なんかない‥会いたい人も居ない‥
だってもう、此処にアンタが居るわ‥もうそれで
充分‥死んだって本望なの‥危険を冒してまで
逢いに来てくれたんだもん‥もうそれで‥」
というわけで、私と太吉っつぁん手に手を取って
翌日、その珍しいキノコを探しに行きました‥。
そして日も暮れなずむ頃になって、やっと発見した
のでありんす。当時から、『鯉ヶ淵』と
呼ばれていた、今やスーパー銭湯の駐輪場と
化した、かつての沼の側で‥‥。
2人はそれを茶碗蒸しではなく
、七輪でちょいと炙って
生醤油つけて食しましたとさ。大人の味。
それを世間は、キノコ心中と呼んだのさ。
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