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「でも最後にちゃんと病院でお母さんに会えたものね。これで良かったんだよね」
話相手のいない恵美はココちゃんに向かってつぶやくように語りかける。
伯父さんの影響もあり海外に強い憧れを持った恵美は、ニューヨークに移り住んでかれこれ20年になる。いったん日本を離れてしまうと航空チケット代もかかるし頻繁に帰るわけにもいかず、そのうち現地に生活の基盤もできますます帰らなくなってしまった。だから今回も丸4年ぶりの日本である。
老いた母をひとり放っておいたという罪の意識が恵美を責めたが、いまさら言っても詮無いこと。これはもうそういう運命だったと思うしかない。
伯父さんが好んで行っていたアジアの国々とはちょっと違うけれど、ニューヨークという街もまた人種が入り乱れ屋台が並び街ゆく人々は服装どころか髪色も肌色もカラフルで多種多様だ。
「私いまニューヨークに住んでるんだよ。伯父さんは行ったことあるかな、ロウアー・イーストサイドのイタリア人街やチャイナタウン、ハーレムの黒人街とか、小さなマンハッタンに世界がギュッと詰まってるみたいで面白いんだよ」
思わずココちゃんに話しかける、ココちゃんの黒いガラスの瞳がきらりと光る。
「私、ひとりぼっちになっちゃったんだね」
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