おじさんがくれたお人形

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 ニューヨークでアメリカ人と結婚した恵美は当時まだ幼かった彼の連れ子を2人育てた。実子には恵まれなかったが、子ども達はよくなつきかわいかった。しかし夫とはいつのまにか距離が開き、その後離婚。子ども達はそれぞれスペインとイギリスで暮らしており、めったに会えない。子どもには子どもの人生があるのだから、それは仕方のないこと。自分自身もまた保守的な親の反対を押し切って若くして海外に飛び出したのだから、気持ちはわかるし文句は言えない。  ただ、寂しい。ひとりっ子である恵美にとって、近しい親族は両親だけであり、だからいま、恵美は一人だ。 「でも私を縛るものはもう何もない、とも言えるよね」  しばらく日本に滞在して実家の整理が済めば、そこから何をしようがどこに行こうが自由だ。 「そうだ。私も伯父さんみたいに、気ままな旅に出ようかなあ」  ココちゃんの瞳がまるでウインクでもするように、きらり、きらりと光った。(いいと思うな)少なくとも恵美には、ココちゃんが賛成したように見えた。
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