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「恵美! お母さんに向かってなんてこと言うんだ。だいたいお前のような子どもは世の中なんて何もわかってないんだから、おとなしく言う事を聞いて大学にいけばいいんだ、すべてはお前のためなんだぞ!」
(でました、「お前のため」「お前のため」……)
「お父さんはいつもそう言うけど、それってセケンテイのためじゃないの? 大企業の重役やってるご立派なお父さんの娘が高卒なんて、恥ずかしいとでも思ってるんでしょどうせ」
「恵美!」
「伯父さんの事も嫌ってたもんね、おかしな格好でどこだかわからないような外国をフラフラして、まともじゃないって悪口言ってたの私知ってるんだから。たった一人の兄弟さえ愛せないお父さんみたいな人間が、まともなわけないよ!」
頬にビリっとした衝撃が走る。父に叩かれたのは……初めてだった。
父は顔を真っ赤にして少し震えているようだった。頬を押さえたままリビングから飛び出した恵美は自分の部屋のドアを乱暴にしめカギをかける。
「ああ!早く大人になりたい、こんな家いますぐ出ていきたい!」
やり場のない怒りとどうしようもない無力感が恵美を襲う。
「伯父さん、伯父さんがいたらきっとわかってくれたよね」
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