18人が本棚に入れています
本棚に追加
思わず棚に置いたココちゃんに目をやる。しかしココちゃんはうつむいて黙ったまま、何の反応もない。
「……お人形がしゃべるわけないか。伯父さんとか言っちゃってまじめに話しかけるとか、私やばいよね」
あるわけない事なのについ現実みたいに思っちゃう。妄想力の強さ小学生の時から変わってないなあ。もう高校生なのに変わらぬ自分の子どもっぽさに気がついて、思わず我に返る恵美。
ココちゃんの島で叔父さんに会った、あの時の記憶はどう考えてもただの夢に決まってる。小さい子って現実と夢がごちゃ混ぜになって、でもすべてがリアルだと思い込んじゃうんだよね。おそらくあれは大好きな叔父さんが死んだというショックで、叔父さんに会いたい一心で、幼い自分が産んだ幻影のようなものだったんだろう。
成長した恵美はずいぶん現実的な考え方をするようになっていた。「ココちゃんと伯父さんと不思議な島」のことは父にも母にも当時一生懸命に説明したが、二人ともあまりまじめに聞いてくれなかったというのもある。
「そうねえ恵美ちゃん、叔父さんに会いたいわよねえ。……でもそれは夢の中のことなのよ」
「ちがうよただの夢じゃないよ、あの島はほんとうにあるんだよ!」
なんとかわかってもらおうと子どもながらに力説したが、お母さんは少し悲しそうな顔をして恵美の頭を撫でるだけだった。
最初のコメントを投稿しよう!