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高校を卒業した恵美は結局進学はせず海外、とりあえず取っつきやすそうな英語圏に行くことに決め、それならばとニューヨークに目標を絞った。映画好きだったこともあり、アメリカの大都市の様子に少なからず馴染みがあったし、何より人種の入り乱れた自由でカラフルな文化に興味があったから。
「どうせアメリカに行くんなら、向こうの大学を目指したらどうなんだ」
「お父さん、だから私は大学に興味がないんだって言ってるでしょ」
「ねえ恵美ちゃん。アメリカなんて危ないわよ、若い女の子が一人で行くようなところじゃないわ」
「へんなところに行かなきゃ大丈夫だって。ホームステイしながら語学学校にまじめに通うんだから平気だよ」
両親はあいかわらず不満げであったが、恵美の強い意志に根負けしてほぼ黙認という雰囲気になっていった。それに渡航費を稼ぐためにバイトを掛け持ちして頑張っている娘の姿を見て、何も言えなくなったということもある。
自分で貯めたお金+親が若干援助するという形で、恵美はようやくニューヨーク行きの手はずを整えた。19歳の誕生日が過ぎ、でも20歳になるまではあと数ヶ月の間がある。子どもから大人になるはざまで恵美は、ついに世界へと向かう新しい扉を開いたのだった。
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