拉致、そして監禁

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 ここ数ヶ月間のぬるま湯に浸かっていたような日々が走馬灯のように思い出された。  温かいお風呂に入れられ、小綺麗な部屋着を与えられ、温かい食事をご馳走になり――  二人で水族館に出かけた。IKUAでサメを買ってもらって。  仕事から帰ってきた間宮さんは疲れた様子をしていても、いつも一緒にご飯を食べてくれたしおいしいと言ってくれた。  上遠野さんが突然やってきたこともあったっけ。 「組から放逐された俺は、一番にお前を探しにいったんだ。そしたらお前間宮と一緒にいたじゃねえか。俺を裏切ってさっさと新しい男に乗り換えやがって。腹の底から怒りが湧いてきた。今までお前を生かしてきた奴は誰だった? 俺だろう? お前なんか俺以外誰も愛してくれないんだよ。それでお前を間宮から取り返すためにどうしようか考えていた時に、声をかけてきた女がいた」  草川だよ、とその名前を榊くんが出してきた瞬間、今の状況を理解するのに精一杯だった思考が急に現実に引き戻された。 「え」  草川さんが榊くんに声をかけてきた?  なんで。どうして。 「あいつはお前のことを許せないと言っていた」 「許せない?」 「仲間だと思っていたのに、だとよ。鈴代さんだけズルい。どうして私ばっかり辛い目に遭わなきゃいけないんだって。むこうも厄介な恋人がいるみたいだな」    ――なるほど。    そう言われて私はピンときた。  時折、草川さんに対して謎の親近感のようなものを覚えることがあったのだ。  周囲の物音に敏感で、視線をうろうろさせている姿をよく見かけたこと。常に人の顔色をうかがっているような様子があったこと。おずおずと話しかけてくるところなど。 「……私をどうするつもり?」 「今度は絶対に逃がさない」
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