お掃除日和

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六時を少しすぎたぐらいに間宮さんは帰ってきた。  玄関の扉が開く音が聞こえて、同時に「ただいま〜!」という元気な声もリビングまで響いてきた。  濡れていた手をタオルで軽く拭き、玄関へと小走りにむかう。 「お帰りなさい。お仕事お疲れ様でした」 「うん、ありがと」  間宮さんから鞄とスーツのジャケットを預かる。ふわりと彼の香水の香りが鼻腔をかすめた。  リビングに入った瞬間 「あれ、なんかすごい綺麗になってない!? 床とか窓とかピカピカ!!」  間宮さんがあたりを見まわしながら言った。鼈甲色の瞳がキラキラ輝いている。  気づいてもらえるのって案外嬉しいものなんだなと、ふとそんなことを思った。自分の頑張りが報われたような気がして。自然と口元も緩んでしまう。 「今日は天気がよかったのでお掃除日和だなあと。シーツも干しておきましたから、お日様の匂いがしますよ!」 「華ちゃんさっすが〜! 俺、お日様の匂い好きなんだよな。あの優しくて暖かい感じがさ。今日寝るの超楽しみ!!」  本当に楽しみで仕方がないというように、間宮さんの表情には幸福感があふれていた。心の底から欲しいと思っていたおもちゃを与えてもらった子どもみたいに。 「鞄とジャケット部屋に置いてくるので先に座っててください。ご飯ももうよそうだけなので」 「ん、了解」
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