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本日の夜ご飯のメニューは焼き鮭と筑前煮といんげんの胡麻和えだ。ザ・和食という感じである。
鮭の骨を取り除きながら考えてしまうのは、今朝戸棚の下の隙間から出てきた写真のことだった。単調な作業をしているとつい思考が過去へと遡っていってしまう。
なにも見なかったことにしよう。そう自分に言い聞かせたというのに。
あの写真はいったいなんなのだろう。あの少女はいったい誰なのだろう。
私とどことなく似ている。
――もしかして。
間宮さんたちが急に家に乗りこんできた時の記憶がふと蘇ってきた。
「さっきのなんでも持って帰っていいってやつ、俺この子がいい!」
そう宣言して彼は私を自分の家に連れてきた。
なぜこんなにもよくしてくれるのかと尋ねた時、一目惚れしちゃってと言っていた。
でも本当は。そうじゃなくて。
もしかして、間宮さんが私を助けてくれた本当の理由は――
「そうだ華ちゃん」
「ひゃ、ひゃい!!」
口から心臓が飛び出るかと思ったぐらいびっくりして変な声を上げてしまった。
慌てて間宮さんを見ると怪訝な表情を浮かべつつ大丈夫かと尋ねてきたので適当にごまかした。
ならいいんだけどさと、彼は前置きをしてから
「明日久々に一日休みが取れたからどこか遊びにいかないかなって。どう? ほら、華ちゃんもうすぐ誕生日でしょ」
「あ、ああ」
まったく予期していなかったことを言われたため、返事が少し遅れてしまった。
誕生日? さっと壁かけカレンダーに目を走らせる。
私の誕生日は十一月八日。今日が十一月十日だから、明後日だ。
だけど私間宮さんに誕生日教えたことあったっけ? どうだったかな? そんな疑問を抱き、首を軽く傾ける。
と同時にこんなことを思ってもいた。
誰かに誕生日を祝ってもらうのっていつぶりだっけ、と。
子どものころのことはあまり覚えていない。母方の祖母がケーキを買ってくれたりプレゼントをくれたりした記憶がただなんとなくぼんやりあるだけで。何歳の時の出来事のかも定かではない。
榊くんとはどうだったかな。パチンコの景品ぐらいはもらったのかもしれないけど、やっぱり同じく記憶は曖昧だ。
「どこか行きたいところとかある?」
その間宮さんの声はなぜかダメ押しのようにして私の耳に届いた。
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