怪しい目線

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 私はといえば、やはり間宮さんと草川さんを交互に見て 「あ、ああうん。そうなんだ」  と慎重に答えた。  間宮さんが「こんにちは」と例の大型犬のような笑みを浮かべつつ明るい声で言ったので内心ほっとした。  よかった。これが正解だったみたいだ。   「大学の同級生の草川さんです」 「草川弥生って言います。鈴代さんとは同じ教養の授業を受けていて――ってデートの邪魔しちゃ悪いよね!! ごめんね、知りあいがいたからつい声かけちゃったの。また学校でね」 「あ、うん。またね」  草川さんは踵を返すとそのまま店の奥へむかって歩いていった。  私は彼女のうしろ姿を見送りながら 「あれですかね。草川さんの視線だったんですかね。間宮さんがさっき言ってたの」 「だといいんだけどなあ」    それが視線のほかにもなにかを気にしていたように聞こえたのだけれど、つっこんで尋ねたとしても上手にはぐらかされそうだと思って私は黙って再びパンケーキを食べ始めた。
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