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拉致、そして監禁
「はっ」
一番最初に視界に飛びこんできたのは見知らぬ天井だった。
首を左右に動かしてあたりの様子を確認する。
分厚いカーテンの隙間からうっすらと光が漏れ出ていた。ひどく殺風景な部屋で、家具といえば中央に机が一つと衣服の乗ったスチールラックがあるぐらいだった。それからおそらく今私が寝かされているベッドか。
えーと、あれ、なんだっけ。起きたばかりの、まだぼんやりとしている頭で考える。
ここ、どこ。なんで私こんなところにいるんだ。
たしかパンケーキを食べに行って、その後雑貨屋さんに寄っていたら間宮さんに電話がかかってきて……
そうだ。思い出した。
草川さんになにかスプレーみたいな物を吹きかけられたんだ。それで私は気絶しちゃったんだ。
――いや、そもそもなんで。なんで草川さんは私に危害なんか加えてきたんだ。
嫌がらせ、とか? たしかに自分が誰かに好かれるような人間だとは思っていないけれど。
単なる嫌がらせにしてはちょっと手が混みすぎているような気もするが。
あるいは、私は今ヤクザの抗争なんかに巻きこまれつつあるのか。草川さんは脅されて私を拉致するのを手伝わされたとか。だとしたら申し訳ないどころではすまないだろう。
などとつらつら考えていたら、足音が聞こえてきて扉の前で止まったかと思うとそれが勢いよく開かれた。
榊くんがいた。
「な、なんで……」
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